空気を察するタモリさんの魅力。多彩な顔を持つタモリさんが24年前に語った「生き残れないタイプ」とは

なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?
『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』
内藤 誼人
廣済堂出版
1,404円(税込)
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 長寿バラエティーの『笑っていいとも!』。これまで、わいては消えてきたタモリさんの降板説や番組リニューアル説。『いいとも』は、この秋に30周年を迎える国民的番組です。本当に番組が終了することになれば、大きな波紋を呼ぶことになるでしょう。

 そんな『いいとも』で司会を続けるタモリさんは、同じ番組司会でも『タモリ倶楽部』では、まったく違う顔を見せます。はじめて『タモリ倶楽部』を観た人は、そのギャップに驚くかもしれません。ただ、人間というものはいつも一貫して同じである必要はありません。その場に応じて、カメレオンのように自分を変えていくことも、生き抜いていく中で大切なことです。

 心理学では、周囲の状況に応じて、自分をうまく演じ分けられる技能のことを「社会的スキル」といいます。この能力を持ち合わせていることで、まわりの評価も高くなります。カルフォルニア州立大学のジェニー・フローラの調査によると、人間関係が円満である人の多くが、社会的スキルも高い人だったと、心理学者の内藤誼人氏は書籍『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』のなかで紹介しています。確かに、宴会の席でもマジメな顔をしている人は、どこかとっつきにくいもの。状況にあわせて、明るく、ハメを外したほうがいいこともあります。

 「おかしなもんで、どこでも関係なくノリまくれるヤツってのはお笑いの世界にいたためしがない。自分のペースだけで誰の前でも平気で何かいったりやったりするヤツがいるけど、ああいうのは芸能人になれないタイプだね。これは微妙なもんで、その場がどういう状況なのか、自分で感知する能力がないとだめなんだよ。どこでも同じノリをしちゃうヤツは、そういうのが働かないんだ」(『SAY』1988年5月)

 これはタモリさんの言葉です。お笑い芸人だからといって、常にバカなことばかり言っていると、ただのバカになってしまう。そういう芸人には、視聴者は最初は面白いと思ってもいずれ飽きてしまうのです。「ただ面白いだけの人」では、自分の底の浅さを露呈してしまっているので、そういうタイプは生き残っていけないと、タモリさんは24年前から警鐘を鳴らしています。これは、芸能界に限った話ではないでしょう。

 「場の空気」を察する力を持つことが、人気を集める多きなポイントとなるのではないでしょうか。「知的な自分でいる」「バカな自分を演出する」といった、キャラクターの幅が、その人そのものの奥行きだといえます。

 タモリさんを芸能人のなかで分類すると、「お笑いタレント」というカテゴリになるかと思いますが、実際にはその言葉でくくれない程の顔を持っています。そういったところもタモリさんの魅力ではないでしょうか。

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