2億円の誕生パーティをする男・スティーブ・シュワルツマン
- 『ブラックストーン』
- デビッド・キャリー ジョン・E・モリス
- 東洋経済新報社
- 3,024円(税込)
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2012年はどんな年になるのでしょうか。世界的な景気の後退と円高の定着、進行。景気が悪い中でも成功している人たちはいます。彼らから学ぶことから始めてみるのもいいかもしれません。
アメリカの世界最大の投資ファンド運用会社「ブラックストーン・グループ」をご存じでしょうか。1985年に設立、2007年にヒルトン・ホテルズを260億ドルで買収したことでも話題となりましたが、リーマン・ブラザーズを退社した二人の男が創業したプライベート・エクイティ(未公開株投資)会社です。資産規模は1024億ドル(2007年末)で、創業者の一人、スティーブ・シュワルツマンの報酬は3億9830万ドル(2006年)。世界最大級の投資銀行であるゴールドマン・サックスの会長兼CEOのそれの約9倍とのこと。
額が大きすぎてイメージすることさえ難しいですが、誕生日パーティに300万ドル(約2億3千万円)の金をかけられる男といえば、少しはわかりやすいでしょうか。そこには、不動産王のドナルド・トランプ夫妻、ソニーのCEO、JPモルガン・チェース、メリルリンチなどのアメリカを代表する銀行のトップもやってきて、ロッド・スチュワートが歌います。
経済誌のライター、編集者であるデビッド・キャリー&ジョン・E・モリスが書いた『ブラックストーン』には、設立当初の苦闘も描かれています。アドバイザー契約を結ぶべく、シュワルツマン氏らは事業計画を企業の経営者やリーマン時代の顧客などに数百通発送。すでにウォール街では名の知れた存在であった二人ですが、期待した返事はひとつもなく、営業に出かけても「オタクの実績はどんなものか」といわれ、結局は徒労に終わったそうです。
まさか世界的な成功者にも、そんな"どぶ板営業"の過去があったとは。その後の資金獲得のくだりには、日本の金融機関の名前も登場します。そして1987年のブラックマンデー直前、氏の判断であるファンドの資金募集を予定より早めに締切ることを決定。これが「ブラックストーン歴史上、おそらく最も幸運な出来事」(シュワルツマン氏)となり、無事船出を果たし、成功への道を歩んでいくことになりました。
本書に描かれているのは一企業の歴史であると同時に、この業界そのものの歴史です。また、シュワルツマン氏の一代記でもあるところが特徴といえます。もちろん、優秀な社員の離反や、妻からの離婚請求(慰謝料は推定で2000万ドル以上)など、成功談でない部分にも学びアリ。儲けが世界規模だということは、それぞれのダメージも相当大きいということもわかります。