もやもやレビュー

自分のくぼみは、誰かをかくまう場所になる。『ショート・ターム』

映画『ショート・ターム』は、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開中です!

 物語の舞台となるのは、短期間、少年少女が滞在するグループホーム。共同生活をする寄宿舎のような所です。ここに来訪する理由は、みな様々。共通しているのは、心に消しきれない傷をもっていることです。そんな彼らを保護し、時に叱咤するケアワーカーたちの目線から、本作は描かれます。

 ケアマネジャーのグレイス(ブリー・ラーソン)は、日々問題が起こる施設の中でも、ハツラツと子供たちと向き合う日々。同僚で恋人でもあるメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)との仲も睦まじく、大変ながらも充実した生活を送っていました。

 そんなグレイスに起こったのが、新たに入居してきた少女ジェイデン(ケイトリン・デヴァー)との出会い、そして自身の妊娠という出来事でした。「父親から虐待をうけた」という同じ境遇をもつジェイデンと接するなかで、忘れがたい過去、父親、そして生まれてくる子供と向き合う覚悟が、グレイスに芽生えはじめます。

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 2年間、グループホームで働いた経験があるというデスティン・クレットン監督が描く本作。ゆるやかに、そして素朴に、子供たちとケアワーカーの姿を映しだします。特にグレイスとジェイデンの交流を観るなかで感じたのは、自分の傷や心の凹みは、ほかの誰かの避難場所にもなり得るということでした。同じ痛みを抱えているからこそ、ジェイデンの苦しみを誰よりも感じることができたグレイス。そしてグレイスにとっては、ジェイデンの存在こそが、過去の闇や将来への不安と向きあうための場になっているのかもしれません。

 日々の喧噪から観る人をかくまい、静かに温めてくれる作品です。

(文/伊藤匠)


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『ショート・ターム』
新宿シネマカリテほか全国順次公開中!

監督:デスティン・クレットン
出演:ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガー・Jr.、ケイト・デバーほか
配給:ピクチャーズデプト
2013/アメリカ/英語/97分

公式サイト:http://shortterm12.jp
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