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プロレス×映画

プロレスを題材にした映画シリーズ:実在の神父レスラーをモデルにした『ナチョ・リブレ』

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 先日、実写版『タイガーマスク』のビジュアルが公開されて筆者の珍作センサーがビコビコしちゃいましたが、そのタイガーマスクの設定を地で行くレスラーが実在したことはご存知でしょうか。
 今回ご紹介するプロレスを題材にした映画は、その実在人物「フライ・トルメンタ」をモデルにした作品のひとつ(※)である『ナチョ・リブレ』(2006)。ジャック・ブラック主演のコメディで、メキシコ田舎町の孤児院で育ったデブ修道士イグナシオが幼少時代からのルチャドール(レスラー)になる夢を実現する、いわゆるダメ男の成長譚。

 街へのお遣い中に人気ルチャドール(ただし性悪ルード)・ラムセスを見かけて、かつての夢が再燃したイグナシオは、恋心を寄せるシスターから「修道院ではプロレスは忌むべきもの。それに偶像崇拝よ」とお説教されたものの、イヤミな司祭様に給仕係としてのミスを叱られるや、俺の居場所はここじゃない!と修道院を(一時)脱走。
 以前、ひったくりに遭った時からそのサル並の運動能力に目をつけていた野生児スティーブンをコンビに引き入れ、場末のルチャ・リブレ興行でデビューを飾ります。

 実在のフライ・トルメンタもグレにグレた若年期を経て修道士になった人物で、30代になってから「孤児院の子供たちを食わせるためにはこれしかない!」といった感じでルチャの道に入った遅咲きの部類だそうな。

 はてさて、ファイトマネーで修道院の子供たちにまともな食事を与え、正式なマスクとタイツもあつらえて「ナチョ&ヤセ」として試合出場を続けるも、素人にはジョバー(負け役)な役回りが関の山。
 愛しのシスターをゲットするためにも勝利への欲を持ち始めたイグナシオたちは、ラムセスとそのマネージャーに掛けあってプロになることを思いつきます。

 バトルロイヤルに勝てばラムセスと一騎打ちが出来る=「プロになれる」というご都合主義的流れになるんですが、現実ではメキシコでプロのルチャドールになるには、実技試験に合格し、州政府が発行するプロライセンスを取得する必要があるため、そう簡単になれるものではありません(他国でプロ実績があってもライセンスが必要)。

 あれやこれやあってイグナシオはラムセスとの対戦権をモノにするのですが、このラムセスの中身は、シルバーキングという日本マットでも知られた名選手とあって、最終決戦が本作最大の見せ場に(お約束のマスク剥ぎなどなど)。
 無論、コメディなので、ラムセス戦含めた各試合シーンは"撮影用"の風情でライブ感は乏しいですが、当初は殴る蹴るだけだった「ナチョ」が最後にはちゃんとした技を繰り出せるようになっていくので、成長物語としてのカタルシスはしっかり感じ取れる佳作となっているのではないかと。

 どうでもいい話ですが、本作米国公開時の広告として、WWE公式サイトの所属スパスタ(選手)紹介ページ上で、実在選手の顔写真と並んでナチョの顔がシレっと掲載されたことがあります。

(文/シングウヤスアキ)

※脚色強めの本作に比べ、1999年公開のジャン・レノ主演『グラン・マスクの男』は、史実に沿った内容の非常に朴訥としたいかにもフランス映画っぽい作品でしたが、2013年現在未だにDVD化されておらず、かつて出回ったVHS版しかない模様です。尚、トルメンタは引退して司祭を続け、二代目のトルメンタJr.も全盛期を過ぎたものの、時折試合をしているそうです。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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