プロレスを題材にした映画シリーズ:"ぼくのかんがえたさいきょうのプロレスイベント"的珍作『モンスター・トーナメント』
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プロレスを題材にした映画というと絶対数が少ない割に、ミッキー・ローク主演の『レスラー』のような人生再生ドラマが多いんですが、今回ご紹介する『モンスター・トーナメント 世界最強怪物決定戦』(2011)は、「古今東西の有名モンスターたちを闘わせる」という手垢のついた陳腐な題材を現代のプロレス中継番組風に仕立てた、案の定の珍作です。
今や日陰の存在となったモンスターたちが、自らの存在意義を懸けて闘うデスマッチが『モンスター・トーナメント』。会場となる朽ち果てた墓地の中央にはリングが置かれ、離れの掘っ建て小屋には実況アナとカラー・コメンテーターがスタンバイ。
サイクロプス vs. ウィッチ・ビッチ(魔女)、レディ・ヴァンパイア vs. ミイラ男のミドル級シングル戦を2試合、そして目玉のトーナメントは、狼男 vs. スワンプ・ガット(ヘドロ男)、フランケンシュタイン vs. ゾンビマンで1回戦を行い、メーン戦で真の王者を決める流れ。いずれの試合も敗者は存在そのものが消えます。
プロレス・格闘技中継番組よろしく、各試合前にはモンスターたちの苦労話や意気込みなどの前振り&煽りVTRが。
例えばウィッチ・ビッチなら、ブサ顔のせいで村人に迫害される日々から、さすらいのマネージャー(ミゼット)にスカウトされ、「ウィッチ・ビッチ」としてプロ(モンスター)デビュー!てな感じ。煽りコメント映像も80年代のWWF(現WWE)のそれっぽい作りになっています。
モンスター同士のデスマッチのくせして、総合格闘技界の名物レフェリーであるハーブ・ディーンが裁くせいか、金的攻撃禁止など厳正なルールがあるように伺えますが、ディーンさん死亡後は凶器攻撃、セコンドの乱入などの反則行為が頻発。
一応、サイクロプスは1つ目からレーザービーム、スワンプ・ガットはスライムゲロといったようにモンスターそれぞれが特殊技を持っているものの、チープなメイクも手伝ってもはやコスプレプロレス状態(※)。
実際、モンスターの中身は本職のレスラーだそうで、フランケンはかつてWWEで「インテロゲーター(軍人ギミック)」「クルガン(怪物ギミック)」で活躍したロバート・マイエが担当。
さらに各モンスターの入場を煽るリング・アナとして、本人役でジミー・ハート(ホーガンのマネージャーとして有名)。大物ケヴィン・ナッシュはゾンビマンのマネージャー役として登場するだけでなく、最後においしい役回りを演じることになります。
「ぼくのかんがえたさいきょうのプロレスイベント」と開き直った低予算映画なので良し悪しについて語るのはナンセンスですが、浪費した90分と視聴に使った金額について建設的な理由を探すハメになるかと思いますので、視聴前に色々考えておくことをオススメします。例えばそう、筆者の場合は「仕事だから損してないし」です。
(文/シングウヤスアキ)
※90年代、日本のインディ団体「W★ING(ウィング)プロモーション」や「IWAジャパン」などで、ジェイソン・ザ・テリブル(13日の金曜日)、レザー・フェイス(悪魔のいけにえ)、フレディ・クルーガー(エルム街の悪夢)、ブギーマン(ハロウィン)といった映画モンスターをパクった覆面レスラーがデスマッチで闘っていた時代があり、本作の監督はそこから着想を得たそうです(DVDの特典映像や、本編中のプロモーターを演じる人物の台詞に「日本のデスマッチを観て」云々の言及があります)。