連続ドラマW『罪人の嘘』は8月31日(日)から放送開始!(全5話/WOWOW)
2003年にスタートして以来、演出に映画監督を多く起用するなど地上波ドラマとは一線を画した本格映像が評判となっているWOWOW制作の「ドラマW」。2008年からは「連続ドラマW」もスタートし、さらに人気を集めています。その「連続ドラマW」最新作が、8月31日(日)から放送開始する、伊藤英明さん主演のリーガルサスペンス『罪人の嘘』(全5話)。大ヒット作『海猿』の影響で勝手にリア充代表的なイメージを抱いていたら、『悪の教典』のヤバすぎるサイコパスっぷりに度肝を抜かれ、『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』ではふんどし姿にもはや胸キュンが止まらなくなってしまった我々映画部。今作では高級弁護士に挑んでいる伊藤英明さんに直撃してきました。
撮影のハードさは映画並み、スケジュールだけはドラマ的
3年にわたる取材をもとに、『ヘルタースケルター』の金子ありささんが脚本を書き上げ、『ヘヴンズストーリー』『アントキノイノチ』の瀬々敬久監督がメガホンをとる(しかも連ドラ初監督!)。伊藤さん曰く、まさに「長編映画のようなドラマ」である『罪人の嘘』。伊藤さん演じる裁判に勝つためなら手段を選ばない高級弁護士・笠原と、『半沢直樹』の近藤役で大ブレイクした滝藤賢一さんが演じる人情派で正義感溢れる街場の弁護士・楠之瀬の対立を通して、「人が人を裁く」ことの意味を問う社会派ドラマです。
撮影期間は約1ヶ月半。法廷のシーンも多いことから、エキストラを含めた出演者も多く、撮影はかなり大変だったそう。
「撮影は映画並みに大変だったんだけど、スケジュールだけドラマみたいな(笑)。けっこうきつかったですね。同じシーンをワンキャメで最低4方向撮るような映画方式で撮影しつつも、撮影ペースはドラマ並みにハードで。普通のドラマって、スタッフの方がみんな職人さんばりに何でもできちゃうので、撮影自体は比較的ライトな感じなんです。でも、今回の作品は手作り感のようなものをすごく感じた。ひとつひとつのシーンを役者、スタッフそれぞれがちゃんと理解し、把握した上でやらないと前に進めない。だからこそ連帯感もすごくあったんです。それに、すごく力のある役者さんたちの中で芝居ができて、たくさんのエネルギーをもらいました」
また、撮影のハードさのみならず、精神的にもきつかったという今作。
「いろんなものと闘ってるんです。プレッシャーはもちろんあるし、雰囲気に飲まれてないか、やりとりで相手を邪魔してないか、相手からちゃんとエネルギーを受け取ってるか、とか。難しいんですよね。正解がないからね。そんな中で自分自身も正解に辿り着けて気持ちよかったと思えた時もあれば、悔しい時もあった。今回は特にその落差が激しかったですね」
高級弁護士だった男が転落していく話。役柄的な辛さもあったのでしょうか?
「正直やり終えるまでは、何の救いもないドラマだと思っていたんです。でも実は転落した先には、ものすごい光が待っていたということをやってみてわかったんです。ディテールは監督やスタッフが作るものだけど、掘り下げていくことに関しては役者はどれだけでもできるんだよね。話自体は5話で完結してるんだけど、俺はその後の笠原と楠之瀬の関係が気になります。 "その後"を想像することが楽しい作品になったなと思いますね。とはいえ実際に続編を作ったらまったく違うテイストの話になっちゃうので、なくていいと思いますが」
滝藤さんの役が、羨ましかった
明らかな殺意があり、死刑求刑されていた連続強姦殺人の容疑者の逆転無罪を勝ち取るなど、簡単には共感しがたい笠原という存在。伊藤さんはどのように彼とシンクロしていったのでしょうか。
「僕は割と人任せなところがあるんです。特に今回は淡々としている役だからこそ、自分自身があまり説明的に演じると薄っぺらく見えてしまう。だから、自分よりも周りが笠原像というのをうまく説明してくれるんじゃないかなって思いながら演じていました。でも正直、滝藤さんたちの弁護の仕方が気持ちよさそうで、羨ましいなぁって思いましたね。俺もああいうのがいいのにって(笑)」
滝藤さんとは『悪の教典』(2012年)以来2度目の共演ですが、いかがでしたか?
「すごいですよ、やっぱり。実は『悪の教典』の時からずっと、もう一回一緒にやりたいなって思っていたんです。この作品が決まった時にも、相手役に滝藤さんをリクエストできないかっていう気持ちが自分の中にもあって。僕の場合、芝居は相手あってこそという部分があるんです。裸でぶつかり合って、感情をぶつけ合って、エネルギーをもらって。滝藤さんは、今すごくバランスのいい俳優さんだと思うんです。すごく自然なんだけど持っていくところはちゃんと持っていく。やっててすごく勉強になりました」
「善とは何か、悪とは何か」を深く問いかける
一見、悪役のようにも感じる伊藤さんの役柄。しかし、対照的ではあるけれど、単純に楠之瀬が「善」、笠原が「悪」とは割り切ることができない。むしろ、物語が進むに従って、何が善で何が悪なのか、わからなくなってしまうのが、このドラマの深みであり面白さです。
「"いい"も"悪い"もないんだよね。楠之瀬と笠原は、単純に言えば「昼と夜」「陰と陽」のようなもので、どちらもものすごく人間っぽい。自分の身内が不幸な事件に巻き込まれて、それに対して復讐することは、法律としては悪だけど、本当に悪だと言えるのか? 時代が違えば悪にもなり得るし、正義にもなり得るんですよ。平等じゃなくてもいいけど、不公平はすごく許せない。そういう部分に切り込んでいってるドラマだと思います」
何かの真似には、何の意味もない
洋画・邦画問わず数多く作られている、法廷や裁判を題材にした映画。名作と呼ばれるものも数ある中で、参考にした作品はあるのでしょうか?
「ないんですよ。何かを観てもし真似しようと思っても、そう撮られてなければ全然そういう風には映らないわけだし。若い時は何かを観て参考にしよう思うことは確かにあったかも知れないけど、何の意味もないんですよね。物まねしているわけじゃないし。監督や、脚本とかでも何かの映画をちょっと引用しているなと感じる部分がよくあるけど、それって何も面白くないと思うんです。そういうことにチャレンジしてみようという精神はもちろん大事だと思うけど」
伊藤さん、ありがとうございました!
(写真/奥山智明 文/根本美保子 ヘアメイク/若林幸子(marvee) スタイリスト/根岸豪)
連続ドラマW 『罪人の嘘』
8月31日(日)より放送スタート(全5話/第1話無料放送)
毎週日曜夜10時
監督:瀬々敬久
出演:伊藤英明、滝藤賢一、木村佳乃、仲代達矢ほか
3年にわたる取材をもとにした本格社会派ドラマ。明らかに殺意ある連続強姦殺人犯を逆転無罪に持ち込んだ高級弁護士・笠原(伊藤英明)。一方、罪の意識もない有村を許せず、弁護を途中放棄した庶民派弁護士・楠之瀬正志(滝藤賢一)は複雑な思いを抱えていた......。