春の花木三姉妹 サクラ・ウメ・モモの基礎知識

撮影:福田 稔
春を代表する花木・サクラ、ウメ、モモ。早春から春の盛りへと、次々にあでやかな花を咲かせるその姿は、日本の春の喜びです。新潟県立植物園園長の倉重祐二(くらしげ・ゆうじ)さんに、その歴史と飾り方のコツを教えてもらいました。

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■ウメ

ウメのふるさとは中国で、奈良時代に薬用として日本に伝わったといわれています。『万葉集』には120首ほども詠まれ、当時は花見といえばウメが観賞されました。
平安時代以降、サクラにその人気を譲りますが、開花期間はサクラよりも長く、江戸時代には200近くの品種が作出され、庭木や鉢植えで長く親しまれています。
開花期は鉢植えを室内に
室内で花もちをよくするポイントは、暖房を使う部屋や南向きの窓辺など、温度が高いところは避けて、なるべく涼しく、やや暗いところに置くこと。無暖房で5℃程度なら、2~3週間花が楽しめます。
プラスチック製の鉢で栽培している場合は、室内に飾るときだけ鉢カバーを使うと見栄えがよくなります。



■モモ

モモは中国原産で、弥生時代に日本へ伝わったといわれています。中国では古くからモモが邪気を払うといわれ、桃の節句も中国の風習が伝わったもので、平安時代には観賞して楽しまれていました。
果樹としての本格的な利用は江戸時代から。観賞用の園芸品種も江戸時代から35品種ほどが記録されています。
戸外で鉢植えの花を楽しむ
開花中は軒下など、乾燥した強い風が当たらないところに置きます。日当たりがよいと花が早く咲き進むので、強い日ざしや西日が当たらないこともポイントです。
また、棚の上などに置いて、目の高さに花がくるようにすると観賞しやすいでしょう。



■サクラ

サクラの仲間は東アジアに多く分布し、日本では縄文時代から、樹皮を弓などに利用していたといわれています。
鎌倉時代初期に品種改良が始まり、江戸時代には390品種ほどが作出。ソメイヨシノ普及前は野生種のヤマザクラが主に観賞されていました。一気に咲くソメイヨシノと異なり、ヤマザクラは開花期がまちまちのため、当時は長く花見を楽しめました。
切り花で長く楽しむ
大きく育ったら切り花で飾るのもおすすめ。切り花を長く楽しむ一番のポイントは蕾の多い枝を蕾のうちに切ることです。
太い枝を切る場合は、株側の切り口に癒合剤(枝の切り口を保護する)を塗って、水分や養分の流出や雑菌の侵入を防ぎます。前年に伸びた細い枝だけを切るなら癒合剤は不要です。置き場は涼しく暗めのところに。


※テキストでは鉢植えにおすすめの品種を紹介しています。
■『NHK趣味の園芸』2022年3月号より

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