日本でつるバラを楽しむなら「シュラブのつる仕立て」が最適な理由

シュラブ(半つるタイプ)の「オデュッセイア」。枝を伸ばして誘引すれば、つる仕立てで楽しめる。1株で高さ約4m、幅約10mくらいまで覆うことができる。撮影:竹田正道
つるバラには3つのタイプがあります。枝の伸長力や開花特性が異なるので構造物の大きさや目的に合った種類を選ぶことが大切です。バラ育種家の木村卓功(きむら・たくのり)さんが日本のコンパクトな庭におすすめしているのは、半つるタイプのシュラブのつる仕立てです。

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■バラに囲まれた非日常の空間を演出する

つるバラは、枝が長く伸びるタイプのバラの総称です。つるバラには、庭を立体的に演出する力があります。庭の雰囲気を変える魔力があるといってもいいくらいです。
構造物にもよりますが、人の身長の倍もある高さからバラに囲まれた、非日常の空間を演出することができます。バラに埋もれるような体験は、ブッシュ(木立ち)のバラでは得られません。
つるバラといっても、クレマチスなどのつる性植物のように、自ら枝を構造物に絡ませたり、巻きついたりするわけではありません。放任されたつるバラが、とげをフックにしてほかの木や構造物を這い上がる姿を見ることもありますが、つるバラは人が構造物に誘引して、人工的に仕立ててこそ引き立ちます。「つる仕立て」といったほうが、本来の性質を表しているかもしれません。

■つる仕立てで楽しめるバラは大きく分けて3タイプ

つる仕立てを楽しむのに適したバラは、ランブラー、クライマー、シュラブ(半つるタイプ)の3つのタイプがあります。
これらの違いは枝の伸長力です。一番伸びる種類が多いのがランブラーで5m前後、次がクライマーで3.5m前後、シュラブ(半つるタイプ)が一番伸びなくて2m前後です。伸ばそうと思えば、表記した伸長力の倍のつる仕立てにすることも可能です。もちろん、誘引や剪定の仕方で小さく育てることもできます。
枝の伸長力と開花特性は反比例するので、枝がよく伸びるバラほど四季咲き性は弱くなります。そのためランブラーは一季咲き性が多く、クライマーは返り咲き性、シュラブ(半つるタイプ)は繰り返し咲き性(強い返り咲き性)の品種が多くなります。

■コンパクトな庭にはシュラブのつる仕立てが最適

日本でつるバラを楽しむなら、よほどの豪邸でないかぎり、伸びすぎず、よく返り咲くシュラブ(半つるタイプ)をおすすめします。枝を切らずに伸ばせば、3~5mほどのつる仕立てもできます。誘引や剪定が大変に感じたら、深めに切り戻して、ブッシュ(木立ち)のように低く咲かせればよいのです。
バラのなかでシュラブ(半つるタイプ)が一番よくわからない、という声も聞きます。それは、剪定しだいでつるバラにもブッシュ(木立ち)にもなる柔軟性のためでしょう。
日本のコンパクトな庭に向き、秋も花が楽しめ、耐病性が強くメンテナンスも楽、つる仕立てもブッシュ(木立ち)も楽しめる。じつはこれほど便利で、おもしろいバラはないのです。
それだけではありません。近年シュラブローズは、世界中で病気に強いバラの育種のメインターゲットにされ、美しさと強さが共存した魅力的な品種がふえています。
■『NHK趣味の園芸』2021年12月号より

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