めぐり来る「季題」で俳句を豊かに

『NHK俳句』2021年10月号より、「ホトトギス」同人、「円虹」所属の阪西敦子(さかにし・あつこ)さんが選者に加わりました。講師を務める講座は「季題あるがまま」。「季題」は「季語」とは違うものなのでしょうか。阪西さんが解説してくれました。

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生き生きとした句を作りたい、それぞれの瞬間の興味深い姿、移ろう時間の味わいを言い留めたい。新鮮な実感や臨場感を感じてもらいたい。俳句を作るとき、そんな風に願うことはありませんか。
その挑戦のために、俳句には「季題」があります。「季語」とも呼びますが、「季題」を俳句の発想の中心に置いて作る場合に(例えば私もそうですが)、その発想の源、自分に俳句を作らせてくれるものへの敬意(?)を表して「季題」と呼んでいます。
では、この「季題」とは何でしょうか。四季を象徴するものでしょうか、歳時記に収録されている言葉でしょうか。どれも季題の一面ではありますが、すこし順序が逆のようです。季題は季節を象徴するというより、時間の経過とともに立ち現れて、時の移ったこと、新たな時間が訪れたことを知らせてくれるものです。歳時記に載っているから季題なのではなく、新たな景色を作り出して、私たちに俳句の源泉を与える言葉を、見やすいように時系列にして、これまでに作られた例句とともに並べ、それぞれの言葉がどのように捉(とら)えられてきたかの蓄積を示し、今に至る道筋を解説したものが、歳時記であると言えます。
■『NHK俳句』2021年10月号より

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