NHK杯予選のしくみ 片上大輔七段が徹底解剖

飯島八段は4年ぶり6回目の本戦出場 撮影:河井邦彦
第71回NHK杯予選では永世称号資格者から新人まで136人が横一線に並び本戦入り18枠を争いました。普段あまり知られていない、NHK杯予選に関してのしくみやルールを片上大輔(かたがみ・だいすけ)七段に解説していただきます。

* * *


■本戦シード権

NHK杯の本戦出場枠は全部で50。このうち、本戦シード枠は32で予選は全ブロックと決まっている。今月と来月の付録は、この18の椅子をめぐる棋士136人の戦いのレポートである。
さて、本戦シード(予選免除)に該当するのは下記の人たちだ。
【1】 前回ベスト4
【2】 タイトルホルダー・棋戦優勝者
【3】 永世称号者
【4】 順位戦A級・B級1組
なお【3】に関しては、近年は現役中に永世称号を名乗るケースがないため該当者なしとなっており、今期は谷川九段(十七世名人)と森内九段(十八世名人)がいずれも予選から出場している。個人的な意見だが、称号を名乗るかどうかで差異が生じるのは微妙な気もする。また棋戦優勝に関しては、若手棋戦は新人王戦のみ対象で、青流戦とヤマダ杯は該当しない。
ここまでは序列や実績による、いわば「固定の」シード枠だが、実はこの他に
5 成績優秀者
というNHK杯独自の仕組みが存在している。

■「成績優秀」とは?

成績優秀によるシード枠数は、本戦枠の50から、【1】〜【4】に該当する人数+予選枠18+女流枠1を除いて割り当てられる。
このうちは名人含め原則人で固定なので、順位戦B級2組以下の棋士がどれだけ【1】・【2】に食い込むかで数字が変動する仕組みだ。理論上は0になる可能性もあるが、例年3〜5人になるよう制度設計されている。
この「成績優秀者」の選抜方法だが、実は棋士でも、よく知らない人も多いのではないかと思う。
・前年1〜月の公式戦成績を
・対局数、勝数、勝率のそれぞれでランキング化して
・その3つの順位を足し合わせた数字の小さい順
というのが正確な定義となっている。
その結果、該当者はほぼ20代前半(もしくは10代)の新人棋士に偏る。これは若手棋戦の出場資格によるところが大きい。出場している棋戦が多ければ、対局数や勝数が多くなるのは自明である。
他棋戦の星取りがこうして出場資格に影響を与える規定はあまり例がなく、NHK杯独特のものとなっている。

■飯島八段の快挙

今期の成績優秀による予選免除者は下記の5名だった。
佐々木大地五段(40勝17敗)
飯島栄治八段(35勝13敗)
出口若武五段(30勝16敗)
青嶋未来六段(29勝17敗)
渡辺和史(29勝14敗)
※次点は八代弥七段、船江恒平六段、都成竜馬七段
特筆すべきは歳の飯島八段である。少なくとも過去5年、この枠に食い込んだ40代以上の棋士はおろか、30代さえ一人もいなかった。また七段以上の棋士も、やはりいなかった。(前期本戦開幕前に昇段した近藤誠也七段を除く)
まだ開幕もする前から快挙というのは妙な気もするが、かなりのレアケースなのは間違いない。この枠には狙って入れるというものでもなく、また将棋界の年度成績は4月区切りのため、普段は意識することのない成績でもあり、隠れた勲章と言える。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2021年7月号より

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