常識破りの「季重なり」

「香雨(こうう)」主宰の片山由美子(かたやま・ゆみこ)さんが講座を務める講座「見直し『俳句の常識』」では、常識にとらわれない句作を提案しています。5月号のテーマは季語をふたつ以上詠みこむ「季重なり」の句を紹介します。

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俳句の基本は定型と季語ですが、季語は一句にひとつというのが原則です。ふたつ以上の季語が入っている場合は「季重なり」といって避けるべきこととされています。
なぜ、季語はひとつでなければならないのでしょうか。じつは、俳諧(はいかい)と呼ばれていた江戸時代の俳句には、複数の季語が入っていることも少なくありません。たとえば、つぎの句は多くの方がご存じでしょう。
目には青葉山郭公(ほととぎす)初鰹(はつがつお)

素堂(そどう)



青葉、郭公(時鳥)、初鰹と、全部季語ではないかと思われるかもしれませんが、俳諧では青葉は季語とされていませんでした。若葉と異なり、青葉が季語として扱われるようになったのは近代になってからのことです。
この句は、目は青葉を楽しみ、山からホトトギスの声が聞こえ、初鰹に舌鼓(したつづみ)を打つ、そんな素晴らしい季節がやってきたと喜んでいます。初鰹を待ちかねていた江戸の人々の心情がうかがえますが、同じ季節のものを列挙することで生じた季重なりです。
女郎花(おみなえし)少しはなれて男郎花(おとこえし)

星野立子(ほしの・たつこ)



現代の俳句でも、このように女郎花と男郎花を一対のものとして詠みこんでいる季重なりの句があります。
■『NHK俳句』2021年5月号より

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