俳句における「想像力」の働き

『NHK俳句』2021年4月号より、「天為」「秀」同人の岸本尚毅(きしもと・なおき)さんが講師を務める講座「俳句と想像力」がスタートしました。

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俳句はわずか十七音です。俳句を読み、味わうとき、読者は必ず想像力を用います。読者が想像力を働かせられるように、作者もまた想像力を用いて句を作ります。
俳句を作り、読む行為は、作者の想像力と読者の想像力の共同作業といってよいと思います。ただし、漠然と「想像力」といっただけではピンと来ません。この講座では俳句における「想像力」の働きを見ていきます。
遅き日のつもりて遠きむかしかな

蕪村(ぶそん)



「時間」そのものは目に見えません。過去や未来、歴史や歳月など、時間について考えるには目に見えないものを思い描く想像力が必要です。掲句は、過ぎ去った一日一日が積み重なっていつしか「遠きむかし」になってしまった、というのです。いつまでも昼のような春の一日を思い浮かべることで「遠きむかし」の遥かさが印象づけられます。
去年今年(こぞことし)貫く棒の如(ごと)きもの

高浜虚子(たかはま・きょし)



去年も今年もない、棒のような時の流れ。「棒の如き」は大胆ですが突飛ではない。「棒」という言葉が想像力を喚起します。「棒」は誰もが知っています。針のような細いものではない。「貫く」のですから丈夫な、力強いものを思い浮かべます。それは「時の流れ」です。「去年今年」にはこんな句もあります。
去年今年一時か半か一つ打つ

高浜虚子



この句は「貫く棒の如きもの」と正反対に、聞こえた音をそのまま詠んだだけです。想像力とほど遠い。名句と言われるのは「貫く棒の如きもの」ですが「一時か半か」の力の抜け方は「想像力」と別の意味で魅力的です。
■『NHK俳句』2021年4号より

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