豆乳は肉、魚介、卵と組み合わせて コクが楽しめる和食

春野菜とあさりの豆乳鍋 撮影:蛭子 真
京都の老舗料亭の3代目、村田吉弘(むらた・よしひろ)さんの連載「だしいらずでつくる和食のはなし」。5月号のテーマは「豆乳」です。

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前回、「酒は米のだし」というお話をいたしました。今回とり上げる豆乳も「豆のだし」と言いたいところですが、酒ほどはっきりとしたうまみは感じられないかもしれません。
ただ、精進料理では炒(い)った大豆でとった「大豆だし」を使いますし、大豆が原料の発酵調味料であるしょうゆやみそにも、しっかりうまみ成分が含まれています。大豆を搾っただけの豆乳は、そこまででもないので、「軽めのだし」くらいに考えるとええかもしれません。
しかし何より豆乳は、良質の植物性たんぱく質がたっぷり。料理にコクとクリーミーさを与えてくれ、しかもしつこくならないのが美点です。牛乳だと、みそなどと合わせんと和の味わいになってくれませんが、豆乳を使えば無理なくおいしい和食がつくれます。
家庭では肉、魚介、卵などの動物性たんぱく質と合わせるとええと思います。豆乳の原料である大豆のうまみはグルタミン酸、肉や魚のうまみはイノシン酸で、合わせると相乗効果が期待できます。豆乳仕立ての鍋がおいしいと人気があるのもようわかります。
今回の一品目は、季節の野菜と貝の豆乳鍋です。あさりなどの貝のうまみはコハク酸という種類ですが、実は大豆や野菜のうまみであるグルタミン酸との相乗効果は期待できないのです。ですが、かえって程よいうまみに収まるので、味としてはええ仕上がりになっていると思います。和食は「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如(ごと)し」ですから。
もう一品は、だしがわりに豆乳を使っただし巻き。うまみが控えめなぶん、コクが感じられる卵焼きです。だしより多めの分量を入れると、うまいこと仕上がります。ぜひお試しください。
※つくり方はテキストに掲載しています。
■『NHKきょうの料理』連載「だしいらずでつくる和食のはなし」2021年5月号より

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