鑑真和上がプロデュースした仏像

全体的にやや太めで、下半身が長く大きい 撮影:大西二士男
「仏教を発展させるために、ぜひ日本に来てほしい」という願いを受け入れ、はるばる中国からやってきた鑑真和上(がんじんわじょう)。日本への道のりは長く過酷で、6度目にしてようやく到着。名プロデューサーである鑑真さんは、戒律(かいりつ/仏教の決まり事)を指導し、唐招提寺を建立。僧侶の学校を開き、多くの弟子を育てました。中国から連れてきた仏師による新たな仏像の誕生など、日本の仏教界に、新風を吹き込んだのです。駒澤大学教授の村松哲文(むらまつ・てつふみ)さんが、鑑真和上がプロデュースした仏像の特徴を解説します。

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■鑑真和上、プロデュースの仏像たち

唐招提寺の境内の東側にある「新宝蔵(しんほうぞう)」には、多くの木造の仏像が収められています。この中に、鑑真和上が関わっている作品が3躯(く)あります。
ほかの仏像と比較すると、それらはつくり方や姿形が異なるため、鑑真和上と共に中国からやって来た仏師(工人)の手によるものと考えられています。その中の1人に、雕檀(ちょうだん)という檀像彫刻(香木を使って仏像を彫る)の専門家もいました。次の4つのポイントをイメージしながら鑑賞しましょう。
・表面は漆を塗らず、素地をそのまま生かした仕上げになっている。
・小顔ながら、体には厚みがあり、肩も張ってたくましい体型。
・衣のたるみを、大きい波と小さい波で交互に彫り分けている。
・頭から台座まで、1本の木でつくられている(一木造り)。

■薬師如来立像

国宝 木造 素地 彫眼 像高160.2cm 奈良時代


おおらかでボリュームのある造形は、日本の仏像には見られないもので、鑑真和上に随行した仏師の作とされる。顔は頬がふくよかに張り、うっすらと微笑んでいるような表情。腹部と大腿部の間は、衣の線が密に刻まれているが、下方はシンプルになり、メリハリがきいている。うねっているように見える衣の端の部分は、波状の線が刻まれ、躍動感がある。頭部の漆塗の螺髪(らほつ/髪の毛)と両手が失われている。
■『NHK趣味どきっ!アイドルと巡る 仏像の世界』より

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