コロナ禍・不安が続く毎日だから 「未来の楽しみ」を園芸で見いだそう

園芸は、楽しいだけではなく、心にも体にもよい影響を与えてくれるものです。千葉大学大学院で園芸の可能性を研究する岩崎 寛(いわさき・ゆたか)先生が、園芸療法の視点からやさしく教えてくれます。

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■継続するメリットがたくさん

長引く新型コロナウイルス禍の中、私たちはいつ終わるのかわからない不安と闘っているといえます。ストレスが少しずつ蓄積していくような最近の環境下では、もやもやが一気に晴れ渡るような出来事も期待できません。効果的な対抗手段は、先々の予定を立てたりして、未来に楽しさを見いだすようにすることだとされています。
そもそも園芸療法で得られる効果の一つは、果実などの収穫や植物の成長という「未来の楽しみ」を得ることです。まさに今を乗り切るために最も効果的な対抗手段だといえます。コロナ禍をきっかけに園芸を始めた多くの人たちは、本能的に正しい選択をしたのかもしれません。
東京都練馬区で実施されている「農の学校」という取り組みがあります。これは農業に関する知識を体験的に学習してもらい、今後の就農や農業ボランティアのために役立てようというもので、ふだんは違う仕事などをしている市民を対象に開講されています。私たちは2019年春の初級コースに参加された方に協力して頂き、継続的なプログラム内で、園芸(この場合は8回の農業技術講習会)を行うことによる心理変化などを測定しました。
行った測定は3種類。初回のみ参加者自身の不安に対する傾向(不安を抱え込みやすい高不安タイプか、不安に強い低不安タイプか)を調べる「STAI/Y2」を実施し、各講座の前後に、その時の気分や感情を測定する検査「POMS」を、ポジティブな感覚とネガティブな感覚を直感的に自己評価する「VAS」測定を行いました。
園芸作業を行う前後で、しかも複数回にわたって心理的な計測を行える機会は珍しく、当日の講座内容や天候データも勘案しながら、さまざまな心理的な効果を読み取ることができました。
講座の前後で爽快感や楽しい気分の向上が毎回確認され、無意識下での活気も大きな向上が認められました。作業内容は各回で違うのですが、例えば第3回の講座では除草などの大変な作業があったにもかかわらず、同時に収穫作業もあったことから疲労感の上昇は少なく、爽快感などの向上が顕著でした。
毎回、作業をするたびに気分や感情がよい影響を受けるということは、園芸が継続して楽しむ価値のある趣味であるということなのです。知的好奇心が満たされていくという変化も、未来への期待と同等の価値のあるものなのかもしれません。
特性不安傾向とVAS測定の結果を左に掲示しました。ポジティブな感覚は、高不安、低不安、いずれのタイプでも園芸作業後に上昇することがわかりました。さらに高不安の人にとっては「不安感」や「精神的ストレス」などのネガティブな感覚も大きく改善することがわかりました。
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK趣味の園芸』連載「心と体にやさしい園芸療法」2020年11月号より

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