苑田勇一九段と超治勲名誉名人の十段戦

撮影:小松士郎
中央志向の独創的な世界がファンを魅了する関西棋院の苑田勇一九段の登場です。七大タイトル挑戦手合の舞台にも3度名乗りを上げた一流の棋風は、今回ご紹介いただいた一手から「方向性が定まった」そうです。

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■治勲さんが稼いで、僕が上に打つ

今回は趙治勲さん(名誉名人)との40年くらい前の一局を選びました。実は、もっと以前、二段か三段のころ、一年ちょっと木谷道場に通ったことがあるんですね。当時は亡くなられた加藤正夫名誉王座が塾頭で、よく打ってもらいました。治勲さんとも何局か打ったのですが、あまり覚えていない。印象も特にないのですね(笑)。
治勲さんとは入段が一緒で、公式戦で初めて当たったのは、七段のときかな。新人王戦でした。そのころから、治勲さんは強いですよ。僕は弱い。治勲さんは合理的な棋風ですね、地を先行して。僕はいい加減な棋風です(笑)。まだ、棋風が定まっていないような感じでしたね。で、僕が20目半勝ったんですよね。そしたら、それからどうも空気がおかしくなって(笑)。
僕は、そんなに中央に打っている気はなかったんですが、治勲さんと打つときだけ中央に打ち出すんですね、妙に。治勲さんが下にくるから上に打つ。相性ですね。だからね、新人王戦のときも、治勲さんが稼いで僕が上に模様を広げるわけですから、最後に殴り込んでくる。そうすると取るか取らないかという話になる。普通は取れないんですけど、取っちゃったんですね。
今回ご紹介する対局は、その2年後くらいなんですけど、途中まで新人王戦と全く同じ進行になりました。治勲さんが腹を立てていて「もう1局こい」と誘導してきてね。あんまり怖い顔をしているから、僕が途中で変えたんですけど。治勲さんのほうが年下ですけれど、やっぱり怖いですよ。気が強いですからね。僕は気が弱いから(笑)
※続きはテキストでお楽しみください。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
※この記事は2月23日放送の「シリーズ一手を語る 苑田勇一九段」を再構成したものです。
文:高見亮子
■『NHK囲碁講座』連載「シリーズ 一手を語る」2020年5月号より

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