なぜ植物には土が必要なの?

撮影:NP
「この植物を育てたい!」と思い立ったときに次に気になるのが土のこと。どんな土が植物にとってよい土なの? 庭に直接植えてもいいの? テーマパークや植物園で長年ガーデナーを務めてこられた河野義雄(こうの・よしお)さんにいまさら聞けない土についての初歩の初歩を伺いました。

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■そもそも植物にはどうして土が必要なの?

多くの植物は土に生えています。植物にとって土はどういう働きをするのでしょうか。
長い進化の過程で、植物は風雨などに負けずに、種として生き延びてきました。水中や空気中より、しっかり体を支えて生存できる土壌が、生育場所としてふさわしかったのでしょう。
また、地上で枝葉を伸ばしているその地下では、同じくらい大きく根を張り、水分や養分を吸収しています。雨がしみ渡って植物の恵みとなったり、季節がめぐるごとに枯れ葉が積もり腐葉土として養分になったりと、土にはそれらを常時、適度に保つ働きもあるのです。
さらに土の中は、空気中や水中に比べて温度変化がゆるやかです。冬、地上部が枯れても、春になると多くの植物が芽吹くのは、土の下で地下茎や根が生き残っているから。さまざまな要因から、植物は土を必要とし、土とともに生存してきたのです。

■庭の土にそのまま植えても大丈夫?

庭に植物を植えつけたいと思ったときに、よい土かどうかの簡単な見分け方として、土をぎゅっと握って、離してみるやり方があります。一瞬形はできるけれど、指で軽く押すとほろっとほどける、そういった土なら植物の生育に向いています。
また、基本的に雨は弱酸性なので、雨の多い日本ではより酸性に偏りがちです。多くの植物は弱酸性を好むので、庭に植えるなら、酸度を和らげるようアルカリ性の苦土石灰を混ぜ込むとよいでしょう。
堆肥などの有機物も加えれば微生物の餌となり、その排せつ物などで小さな土の粒が互いにくっつく土の団粒化を促進して、通気性、排水性、保水性を高めます。有機物を加えた土は、肥料分を蓄える能力が高まるほか、次第に分解され自らも肥料分の補充となるなど、植物の生育に向いた土に近づけることができます。
■『NHK趣味の園芸』連載「大人の園芸入門」2020年5月号より

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