森内俊之九段×木村一基王位 好調40代棋士の熱戦

左/森内俊之九段、右/木村一基王位 撮影:河井邦彦
第69回NHK杯2回戦第14局には、先ごろ初タイトルを獲得した木村一基(きむら・かずき)王位が登場、森内俊之(もりうち・としゆき)九段と対決した。小田尚英さんの観戦記から、序盤の展開をお伝えする。


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■新王位の登場

46歳3か月の最年長記録で初戴冠(たいかん)した木村が、王位の肩書でNHK杯にやって来た。多くのファンが涙した勝利により、令和最初の夏に木村の名が刻まれた。かつての名棋士たちが「衰えが出る40代後半はきつい」と口をそろえるのを聞いてきただけに、信じられない快挙だ。
対局前に少し木村と昔話をした。竜王戦担当者だった筆者は最初のタイトル戦に同行した。2005年のこと。「負けたあと酔って死にたいと言ったんですよね」と木村は振り返った。以来…7度目の挑戦だった。
木村より3歳上の森内。「今は好きなこともしています」と言う。フリークラスに転じ日本将棋連盟の理事からも離れ、肩の荷を減らしている。ただし十八世名人資格者の力は健在で昨年はベスト4。今の40代棋士は昔とは違うのかもしれない。
「慌てず元気よく」が木村の抱負。森内は「乗ってる相手なので細心に大胆に」。局面は横歩取り青野流(1図)。解説の佐藤天彦九段は「有力な戦法で後手の横歩取りが減っています」。飛車交換後の△8二歩(2図)が受け師・木村らしい。

 



■木村の世界観

2図から▲3八銀に、木村は意表の△2八飛。窮屈な場所に気合いで打ち込んだ。事前に指摘していた佐藤も驚く。「まさかという所でまさかをやる。木村王位の世界観は魅力的です」△2八飛に、飛車を閉じ込める▲2七歩は△2六歩▲3九金△2七歩成▲2八金△同と。6九玉は△2六飛成▲6八銀△▲2八竜▲4五桂△7七角成▲同桂△3七歩が感想戦の手順で、森内は「銀を立ってひどい目に遭った」。長考の▲6八銀で、△2七角を甘受する手順を選んだが。これは後手ペースだ。
▲3八銀では、▲8三歩が局後に検討された代替手段。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2020年1月号より

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