貧乏人のキャビア? 世界の清貧レシピ

「貧乏人のキャビア」こと、なすのキャビア 撮影:野口健志
外国にも「安いほうがおいしい料理」はあるのかしら? 世界を旅する料理研究家・荻野恭子(おぎの・きょうこ)さんに尋ねると「その土地にある素材で、日々家庭で食べられている料理がいちばんよ!」とのお言葉。各国のとびきりおいしい庶民派料理を教わりました。

* * *

 

■世界の清貧レシピって?

b子(以下b) 荻野さーん。ヨーロッパには「貧乏人のキャビア」なんて、おもしろい名前の料理があると聞きました。どんな料理か知りたいです。というか、食べさせてほしいでーす!
荻野さん(以下荻) まぁ突然ね。でもいいわよ、家にあるものですぐにできるから、つくりながらお話ししましょう。
b あれれ、「キャビア」なのになすを使うんですか?
荻 そう。細かく刻んだなすを炒め煮にしたり、焼きなすをたたいてペースト状にしたりする料理です。なすはインド原産で、ヨーロッパから中東と広く食べられているから、こういう料理は昔から各国にあったの。確かに黒い皮がつぶつぶしたキャビアのようだから、産地のロシアの人や、キャビアを食べたフランスの都市部の人たちがユーモアを込めて「貧乏人の」と名付けたのかもしれませんね。でも、とってもおいしい料理なのに、貧乏料理呼ばわりなんて残念だわ。素材を生かす庶民の知恵が詰まった傑作料理ですよ。

■ねぎが○○○○○○!?

b ほかにも、その手の料理はありますか?
荻 ねぎを柔らかく煮たものを「貧乏人のアスパラガス」とも言いますよ。
b え。なぜ、ねぎがアスパラガス???
荻 ホワイトアスパラガスのことですよ。ヨーロッパでは春を告げる野菜として、とても人気があります。白いねぎをホワイトアスパラガスに見立てたというわけね。
b キャビアみたいに高いんですか?
荻 そんなことはないけれど、春の一時期にしか出回らないから、おもしろがって貴重品扱いしたのかしら。「江戸っ子の初がつお」みたいなものかもしれませんね。
b 「貧乏人」なんて言うから、しみったれて寂しい料理だと思ったら、みんなが大好きで、よく食べられている料理なんですね。
荻 身近な素材で、つくり方も簡単だから、ずーっとつくられてきたんでしょうね。そういう庶民派料理は、シンプルでおいしいのよ。
b おもしろいですね! もっと知りたいです。
荻 それでは、「貧乏人」という名前はついていないけれど、つくりやすくておいしい庶民派料理のいくつかをご紹介しましょう。
※つくり方はテキストに掲載しています。
■『NHKきょうの料理ビギナーズ』2020年1月号より

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