山城宏九段、圧倒的だった小林光一棋聖との棋聖戦七番勝負
- 撮影:小松士郎
七大タイトル挑戦手合の舞台に6度登場し、近年は日本棋院副理事長やナショナルチームの監督も務められた山城宏(やましろ・ひろし)九段。今回は山城ファンには忘れ得ぬ棋聖戦七番勝負から「一手」を選び、語っていただきました。
* * *
■7局目まで打ちたい
今回は、小林光一棋聖に挑戦した七番勝負の第5局から一手を選びました。
七大タイトルには、加藤正夫王座に挑戦したのが初めてで、1年空けて武宮正樹本因坊に2年連続挑戦しましたが、ストレート負けかやっと1勝できるかどうか。全然歯が立たないような感じで、はね返されました。その数年後の、4度目の挑戦でした。
当時小林さんは棋聖を6連覇中、名人と碁聖も4連覇中の三冠で、趙治勲本因坊との2強時代でした。当然このシリーズは「小林、趙の頂上決戦」になると思われていました。あのころの棋聖戦は挑戦者決定戦が三番勝負だったのですが、1局目は趙治勲本因坊に完敗でした。ところが2局目に、完敗の碁を大逆転して勝ち、3局目も割とスムーズに勝って、私が挑戦者になってしまったのですね。
私は、とにかく小林棋聖は圧倒的な存在でしたから、タイトルを取ろうとは考えもしませんでした。ただ、ナンバーワンの棋戦、棋士なら誰もが目標にする一番の舞台なので、恥ずかしい碁は打ちたくないという気持ちはありました。それに何より七番勝負を打てることがうれしくて、「7局目まで打ちたいな」という気持ちが強かったのを覚えています。
1局目は、オーストラリアで初めての海外対局だったのですが、とても気持ちよく打てて、自分でもびっくりするくらいいい碁でした。2局目も勝って、好調だったのですが、続く2局を連敗しました。3局目は結構接戦でしたが、4局目は完敗でしたので、「やっぱり強いな」という思いにさせられましたね。タイに戻されたというより、流れ的にも「駄目かな」という感じがしていました。
でも、やはり、番碁を打てる楽しさが強かったのですね。勝ち負けよりそのうれしい気持ちで5局目に臨んだように思います。
※続きはテキストでお楽しみください。権利処理の都合上、電子版では棋譜解説を掲載しておりませんのでご注意ください。
※肩書・年齢はテキスト掲載当時のものです。
文:高見亮子
■『NHK囲碁講座』2019年11月号より
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■7局目まで打ちたい
今回は、小林光一棋聖に挑戦した七番勝負の第5局から一手を選びました。
七大タイトルには、加藤正夫王座に挑戦したのが初めてで、1年空けて武宮正樹本因坊に2年連続挑戦しましたが、ストレート負けかやっと1勝できるかどうか。全然歯が立たないような感じで、はね返されました。その数年後の、4度目の挑戦でした。
当時小林さんは棋聖を6連覇中、名人と碁聖も4連覇中の三冠で、趙治勲本因坊との2強時代でした。当然このシリーズは「小林、趙の頂上決戦」になると思われていました。あのころの棋聖戦は挑戦者決定戦が三番勝負だったのですが、1局目は趙治勲本因坊に完敗でした。ところが2局目に、完敗の碁を大逆転して勝ち、3局目も割とスムーズに勝って、私が挑戦者になってしまったのですね。
私は、とにかく小林棋聖は圧倒的な存在でしたから、タイトルを取ろうとは考えもしませんでした。ただ、ナンバーワンの棋戦、棋士なら誰もが目標にする一番の舞台なので、恥ずかしい碁は打ちたくないという気持ちはありました。それに何より七番勝負を打てることがうれしくて、「7局目まで打ちたいな」という気持ちが強かったのを覚えています。
1局目は、オーストラリアで初めての海外対局だったのですが、とても気持ちよく打てて、自分でもびっくりするくらいいい碁でした。2局目も勝って、好調だったのですが、続く2局を連敗しました。3局目は結構接戦でしたが、4局目は完敗でしたので、「やっぱり強いな」という思いにさせられましたね。タイに戻されたというより、流れ的にも「駄目かな」という感じがしていました。
でも、やはり、番碁を打てる楽しさが強かったのですね。勝ち負けよりそのうれしい気持ちで5局目に臨んだように思います。
※続きはテキストでお楽しみください。権利処理の都合上、電子版では棋譜解説を掲載しておりませんのでご注意ください。
※肩書・年齢はテキスト掲載当時のものです。
文:高見亮子
■『NHK囲碁講座』2019年11月号より
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