初参加の新人3人の結果は……? 第69回NHK杯 激闘の関東予選レポ
- 文・写真:岩田大介
■厳しい予選
第69回NHK杯テレビ将棋トーナメントの本戦出場を懸けた予選が1月から2月にかけて行われた。
シード32名を除く現役棋士が、関東12と関西6のブロックに分かれて本戦出場の切符を争う。テレビ対局の影響力は、今も昔も非常に大きい。本稿では、関東予選の決勝を中心に激闘をお伝えする。
今回、関東予選に初めて出場した新人は、長谷部浩平四段、本田奎四段、山本博志四段の3人。
本田と山本は1回戦で敗れた。2人が敗因に挙げたのは、対戦相手の強さに加えて、経験の少なさだった。
「予選の持ち時間は研究会で指すときと同じなので焦らないと思いましたが、30秒将棋になってからは、いつも以上に早く感じました」(本田)
「20分がこんなに短いとは。1日に3局もあると、どのように事前準備すればいいのかも分かりませんでした。今年に入ってから勉強量を増やしましたが、反省してもっと勉強します」(山本)
予選の持ち時間は各20分、それを使い切ると30秒将棋となる。本田も山本も秒読みに入った直後に疑問手を指し、形勢を損ねた。この経験を来期に生かしてもらいたい。
■長谷部が本戦へ
関東予選で唯一、本戦初出場を決めたのが長谷部だ。決勝で髙野智史四段を破った。
1図で▲3三歩が好判断。4五桂がよく働いているため、桂交換は先手の損にも思えるが、〈1〉△3三同桂は▲3四歩△4五桂▲同歩△同銀に▲4四桂で両取りが決まる。
実戦は〈2〉△4三金左▲2二歩△同銀▲3二角△3三桂に▲2一角成で長谷部がペースを握り、快勝した。
長谷部は王位リーグ入りなど、実績を残し始めているが、昨年のデビュー当初は通算勝率が2割台だった。現在は6割台に戻している。ある夏の日、次のようなネット上の書き込みを目にしたことが、復調のきっかけになった。
「長谷部がこれだけ負けているのだから、いまの三段リーグはレベルが低い」
これを見た長谷部は腹を立てた。書き込んだ相手にではない。自分に対してである。三段リーグを戦ったライバルたちに申し訳ないと思った。
それから勉強量を三段時代と同じくらいに戻した。平均して1日8時間、しっかりと将棋に向き合う。その努力が本戦出場につながった。
※続きはテキストでお楽しみください。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
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