ジェーン・スーさんとわが道を行く8人が語りつくす、人生折り返してからのあれこれ

私がオバさんになったよ
『私がオバさんになったよ』
ジェーン・スー,光浦 靖子,山内 マリコ,中野 信子,田中 俊之,海野 つなみ,宇多丸,酒井 順子,能町 みね子
幻冬舎
1,512円(税込)
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 『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』や『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』などのエッセイの著者であり、TBSラジオ番組『ジェーン・スー生活は踊る』ではパーソナリティを務めるジェーン・スーさん。彼女が各分野で活躍する8人それぞれと語りつくした対談集が『私がオバさんになったよ』です。

 対談相手は、光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さん。この人選は、ジェーンさんが過去に対談したことのある人の中から「もういちど話したかった」という気持ちを持っている相手に声をかけたのだとか。(能町さんだけは例外で、じっくり話をしてみたかったけれど機会がなかった相手だそう)。

 タイトルからもわかるとおり、本書はオバさん、すなわち"折り返し地点を過ぎた年代の人々"の人生におけるいろいろがテーマになっています。たとえば、最初に登場する光浦靖子さんとは体力的な部分での話も。光浦さんの「メンタル面では昔よりひりひりせずに楽しめるようになりました。今は体力的肉体的疲労」という言葉や、ジェーンさんの「20代は自我との闘いで疲れ果てる。体力は有り余っているのに、効率がすごく悪い。30代で少しバランスがとれてきて、40代でメンタル面がだいぶ整って、デフラグが全部終わって効率よく動けるようになるかと思いきや、今度は身体が動かない」といった言葉には、同年代なら業種は違えど共感しきりな人も多いのではないでしょうか。そんな中、マッチョな男社会や年下が多くなる職場などで40代以降の女性たちはどのようにするのが生きやすいのか......二人の対談は必読です。

 他の相手との対談も実に貴重で、結婚していないこと、子どもがいないこと、男性女性それぞれが抱える現代社会の呪い、仕事のしかた、パートナーとの役割分担、親との関係性......などなど、誰しもが抱えるであろう悩みやモヤモヤが次々に出てきます。

 「結婚したら仕事をやめて、子どもを産んで......」といった決まった価値観が崩壊しているともいえる今の時代、混沌としていて何が正解なのか、その答えを求めている人も多いかもしれません。そんな中で、本書から参考にすべきは「バリエーションを知る」「多様性を受け入れる」ということなのではないでしょうか。「40代女の生き方のバリエーションが増えていくことが必要」とは本書に出てきたジェーンさんの言葉ですが、さまざまな考え方、さまざまな生き方をする40代以降の皆さんを通して、人生はひとつじゃないということが本書からはしみじみと、そしてポジティブに伝わってくることと思います。

 すでにオバさんになった人だけでなく、いつかオバさんになる人も、そしてオバさんとコインの表裏一体で生きるオジさんの皆さんにも。今を生きるすべての人に、ぜひオススメしたい一冊です。

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