羽生世代の頂点を極めたのは——第68回NHK杯決勝戦

左/羽生善治九段、右/郷田真隆九段 撮影:河井邦彦
羽生善治(はぶ・よしはる)九段と郷田真隆(ごうだ・まさたか)九段の頂上決戦となった第68回NHK杯。小暮克洋さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。


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■羽生世代の独占劇

平成最後の決勝は、歴史の節目を飾るにふさわしい重厚なカードが実現した。羽生は11度目、郷田は2度目の優勝を目指す。今回の準決勝には、いわゆる「羽生世代」の4人が残った。若手の台頭が著しい将棋界で、これはいったいどういうことか。
ベスト4の一角を占めた森内九段は「偶然の要素が強いのではないでしょうか。私の場合はたまたま星が集まっただけ。他のお三方は実績もあり、よく手が見えますので、一人一人で考えれば不思議はないように思います」と謙虚に笑うのだが…。


■解説者の分析

羽生世代一色のベスト4について、佐藤九段はこう話す。「AIを積極的に活用している若手が敗退したのは、彼らは読みきるスタイルの将棋なので波に乗れなかったということかもしれません。我々が感覚を磨いたのとは違うアプローチ。ぎりぎりの研究を深めていると、早指しの読みきれなさそうな将棋では迷いが生じやすい。今回は旧世代の経験が生きたということなのではないでしょうか」
振り駒で羽生の先手と決まり、戦型は角換わり腰掛け銀に進む。郷田は得意の6三金型に構えた。


■戦端開く

角換わりにおける定跡の進歩には目をみはるほかない。3年前の決勝で後手が6二金―8一飛型に組んだとき、やはり解説を務めていた佐藤九段が「これは斬新です!」と驚きの声を上げたものだが隔世の感がある。
△4四歩にすぐ▲4五歩(3図)のリズミカルなやりとりで戦闘開始。△同歩は▲同桂△4四銀▲4六歩で先手十分となる。△7五歩も素早い着手だった。
羽生は4筋を取り込み、△4四同銀の形を決めてから▲7五歩と手を戻す。郷田は△6五桂(4図)で攻めの形を探った。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2019年5月号より

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