菅井竜也七段が振り飛車党として思うこと

菅井竜也(すがい・たつや)七段が講師を務める「菅井流 やんちゃ振り飛車」。2019年5月号では居飛車が持久戦にした場合のゴキゲン中飛車の戦い方について解説しています。コラム「タッチャンの空飛ぶ振り飛車」では、振り飛車と歩んできた修業時代について綴ってくれました。

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■常識を覆す攻撃的振り飛車に魅了されて

振り飛車との出会いは5歳のときでした。角道を止める四間飛車と美濃囲いを初めに覚えたのですが、この一つの戦法を武器にして強くなったと言ってもウソではありません。なぜ、これほどにまで気に入ったのでしょうか。シンプルな形と覚えやすい手順、相手がどうこようと、左から4筋目に飛車を振れば四間飛車になることが大きかったと思います。
愛着もあり、奨励会に入ったあともしばらく指し続けていましたが、対戦する相手が強くなってきますと、それだけで勝てるほど甘い世界ではありません。
次の主力戦法となったのが、4、5月号で解説したゴキゲン中飛車でした。
小学5年生のとき、ゴキゲン中飛車の本をもらったのが知ったきっかけです。振り飛車は角道を必ず止めるものだと思っていました。それが角交換歓迎、出だしで居飛車の飛車先の歩交換を受けないなど、常識を覆す攻撃的な中飛車に新たな将棋の面白さを発見したのです。
奨励会では香落ちという手合いがあり、香を落とした上手は振り飛車にするのがセオリーとなっています。居飛車党の人は感覚が分からずに苦労するとよく聞きます。自分は香落ちを大得意にしていて、中飛車で多くの白星を稼ぎました。
奨励会の有段者になると、自分のアイディアを積極的に試すようになりました。講座でも見ていただいたとおり、自分は主導権を握って攻める振り飛車を指していきたいと思っています。
いま、トップで活躍する振り飛車党が少ないことに寂しさを感じずにはいられません。奨励会員やアマチュア強豪でも居飛車党が多くなっているそうです。自分は久保利明九段が振り飛車で勝ちまくる姿にずっと憧れていました。大舞台で勝たなければ振り飛車党は今後、増えていかないという危機感があります。久保九段は大野源一九段の三間飛車に憧れたそうです。次は自分が未来のために果たすべき役割が大きいと思っています。
※後半はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2019年5月号より

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