土壌微生物って何?

野菜を育てている畑の土の中には、たくさんの土壌微生物が暮らしています。元明治大学黒川農場特任教授で農学博士・技術士の藤原俊六郎(ふじわら・しゅんろくろう)さんに、その働きについてお話を聞きました。

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■土の中はどうなってる?

土の上では、太陽エネルギーを利用して成長した植物を動物が食べ、死んだ動物などは微生物により分解されて土に還り、植物の栄養源になります。これを「食物連鎖」といいます。土の中には「分解者」である土壌微生物がたくさんすんでおり、よい畑の土には、1g 当たり1億以上もの微生物がいるといわれています。ひと口に畑といっても地域や栽培作物により違ってきますが、よい畑では1平方メートルの表土(深さ1.5mm)に、重さにして700g 、数にして100兆以上もの土壌生物がおり、そのうち95% が土壌微生物(70〜75%がカビ、20〜25% が細菌や放線菌)、残り5% が土壌動物(ミミズやダンゴムシなど)といわれています。

■どんな微生物がすんでいるの?

土壌微生物はおおまかに、「菌類」「細菌」「放線菌」「原生動物」「藻類」の5種類に分けることができ、下記の3つが代表的です。
重さで見ると、最も多いのは「菌類」で、主に有機物の分解に関与しています。菌類には、菌糸をもつカビ(糸状〈しじょう〉菌)やキノコ、菌糸をもたない酵母が含まれ、土壌微生物の70%を占めています。次に多いのが「細菌(バクテリア)」です。細菌は小さいため種類や数は最も多く、きわめて多様な役割をしています。「放線菌」は細菌の仲間で、カビのように菌糸をもちます。緑藻などの「藻類」や、アメーバなどの「原生動物」は、土壌中では存在が限られます。
放線菌
「細菌」の仲間で、カビと同じように菌糸を伸ばすものを放線菌といいます。抗生物質を出す菌が多く、病原菌をやっつける効果が期待されています。落ち葉が十分に腐った山の土は特有の「土の匂い」がしますが、これは放線菌の出す匂い。
細菌
乳酸菌や納豆菌などで「バクテリア」ともいわれ、土の中では数や種類が最も多い菌。丸い形をした「球菌(きゅうきん)」、細長い形をした「桿菌(かんきん)」、曲がりくねった「らせん状菌」などいろいろな形をしています。動物では腸内細菌として重要。植物にとっても、栄養分を供給する働きをもつ重要な菌が多くいます。
菌類
土の中で有機物の分解に大きく貢献しています。キノコや酵母なども含まれ、なかでも菌糸を伸ばし、胞子を作るものがカビ(糸状菌)とも呼ばれます。植物病原菌が多いので嫌われることも多い一方、コウジ菌のように食品に利用される菌も多いのです。
※続きはテキストでお楽しみ下さい。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2019年4・5月号より

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