「まさか自分が」 菅井竜也七段、初の講座スタートに寄せて

講座「菅井流 やんちゃ振り飛車」の開講と同時に、講師の菅井竜也七段による連載コラム「タッチャンの空飛ぶ振り飛車」が始まりました。第1回では、初めて講座を持つ意気込みを綴ります。

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少年時代、日曜の朝は毎週、『将棋の時間』を楽しみにしていました。将棋講座で印象に残っているのは久保利明王将の「さばきの極意」。振り飛車党の菅井少年としては雲の上のような存在であり、多くの手筋を知ることができました。講座の最後には当時、詰将棋のコーナーがありました。なんとか放送時間内に問題を解きたくて、手元に将棋盤を用意していまかいまかと待ち構えていたものです。
プロの対局というものを初めて見たのは、NHK杯将棋トーナメントでした。ある日、ある先生の解説に興味をひかれました。専門的な話をする方が多い中、その先生は棋士のエピソードを披露するなど、とても面白かったのです。それが師匠となる井上慶太九段で、後に手紙を書いて弟子入りを志願するのですが、その話は別の機会に書きたいと思います。
初めてNHKのスタジオに行ったのは、小学5年生のときの小学生名人戦。プロ棋士の登竜門であるこの大会は準決勝からテレビで放送されます。緊張感はいまでもよく覚えています。棋譜の読み上げ係と記録係の方がいて、立派な将棋盤、初めて見る一字彫りの駒…すべてに驚きました。対局は準決勝で敗退しました。翌年もベスト4に残って今度は決勝戦に進出しましたが、佐々木勇気七段に敗れて涙を呑(の)みました。少年時代のNHKスタジオはほろ苦い思い出が多いです。
プロ棋士になってからは、対局者としてNHKスタジオに入るようになりました。中でも師匠の井上先生と対局することができたのはよい思い出の一つです。
さて、まさか自分が講師として出演するとは思いもよりませんでした。出演依頼があったときはビックリしましたし、自分に務まるのだろうかと…、不安な気持ちもありました。しかし、このような素晴らしい機会はめったにありません。かつての自分のように、テレビの前の方々に楽しんでもらえるような講座にしたいと思っています。
※肩書きテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2019年4月号より

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