熱戦続くNHK杯戦
第68回NHK杯戦は3回戦を終え、ベスト8が決定しました。大詰めの熱戦を、観戦記者の後藤元気さんが振り返ります。
* * *
■時間を超える
今月はNHK杯の観戦記が6局。カードも戦型もバリエーションに富んでいたので、楽しく観戦していただけたのではと思います。
局数が多かったこともあり、僕も羽生善治九段—菅井竜也七段戦を担当しました。さらりと羽生九段と書きましたが、やっぱりなかなか慣れません。皆さんも同じでしょうね。
解説の森内俊之九段は羽生さんと同学年で、子どものころからお互いをよく知る間柄。菅井さんが出場した小学生名人戦では解説を務めており、そのときの話をされていると、森内さんを軸にして時間が行ったり来たりしているような感覚になりました。将棋にも人にも歴史があり、それが厚みになっていきます。
岩田大介さんが執筆した久保利明王将—今泉健司四段戦の観戦記も、2人の過去と現在、そして未来を思わせる内容でした。藤井聡太七段、深浦康市九段を破った今泉四段の快進撃は止まりましたが、将棋への思いの強さと勝負への執着は非常に印象に残りました。次に本戦に登場してくるのを楽しみに待ちましょう。
■何度でも言われる
3回戦第7局の豊島将之王位・棋聖—行方尚史八段戦では、出産と育児のため休んでいた藤田綾女流二段が司会に復帰。会う人会う人に「おめでとう」と言われていました。前にも書いたと思いますが、将棋界はランドセルを背負っているころから何十年もつきあいが続くところ。藤田さんは最年少の11歳で女流棋士になったので、多くの人が当時のことをよく知っています。
だから「あの、まんまるほっぺの綾ちゃんが立派になって……俺も年をとるわけだよなぁ」なんて、そのころの自分を思い出しながら、ついつい感慨に浸ってしまいます。同じようなことばかり書いてますね。
佐藤天彦名人—広瀬章人竜王戦の解説を務めたのは阿久津主税八段。自身も昨年に長男が生まれているため、藤田さんと首がすわる時期や夜泣きのことなどを話していました。
天彦さんや広瀬さんも当然ながら長いつきあいなので目を細めて二人の会話を聞いていますが、それは今だけのこと。盤の前では別人28号にジャガーチェンジ(豹変)するのだから、毎度ながら棋士のオンオフのスイッチには驚かされます。
その佐藤—広瀬戦の観戦記を執筆した大川慎太郎さんは、「見よ、これが指し盛り(さしざかり)だ」とタイトルをつけました。かっこいいです。まさか「見よ、これが刺し盛り(さしもり)だ」なんて、居酒屋メニューみたいな見間違いをした残念な人はいませんか?
大丈夫、あなたは一人じゃありません。弊誌の編集長がお仲間です。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2019年3月号より
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■時間を超える
今月はNHK杯の観戦記が6局。カードも戦型もバリエーションに富んでいたので、楽しく観戦していただけたのではと思います。
局数が多かったこともあり、僕も羽生善治九段—菅井竜也七段戦を担当しました。さらりと羽生九段と書きましたが、やっぱりなかなか慣れません。皆さんも同じでしょうね。
解説の森内俊之九段は羽生さんと同学年で、子どものころからお互いをよく知る間柄。菅井さんが出場した小学生名人戦では解説を務めており、そのときの話をされていると、森内さんを軸にして時間が行ったり来たりしているような感覚になりました。将棋にも人にも歴史があり、それが厚みになっていきます。
岩田大介さんが執筆した久保利明王将—今泉健司四段戦の観戦記も、2人の過去と現在、そして未来を思わせる内容でした。藤井聡太七段、深浦康市九段を破った今泉四段の快進撃は止まりましたが、将棋への思いの強さと勝負への執着は非常に印象に残りました。次に本戦に登場してくるのを楽しみに待ちましょう。
■何度でも言われる
3回戦第7局の豊島将之王位・棋聖—行方尚史八段戦では、出産と育児のため休んでいた藤田綾女流二段が司会に復帰。会う人会う人に「おめでとう」と言われていました。前にも書いたと思いますが、将棋界はランドセルを背負っているころから何十年もつきあいが続くところ。藤田さんは最年少の11歳で女流棋士になったので、多くの人が当時のことをよく知っています。
だから「あの、まんまるほっぺの綾ちゃんが立派になって……俺も年をとるわけだよなぁ」なんて、そのころの自分を思い出しながら、ついつい感慨に浸ってしまいます。同じようなことばかり書いてますね。
佐藤天彦名人—広瀬章人竜王戦の解説を務めたのは阿久津主税八段。自身も昨年に長男が生まれているため、藤田さんと首がすわる時期や夜泣きのことなどを話していました。
天彦さんや広瀬さんも当然ながら長いつきあいなので目を細めて二人の会話を聞いていますが、それは今だけのこと。盤の前では別人28号にジャガーチェンジ(豹変)するのだから、毎度ながら棋士のオンオフのスイッチには驚かされます。
その佐藤—広瀬戦の観戦記を執筆した大川慎太郎さんは、「見よ、これが指し盛り(さしざかり)だ」とタイトルをつけました。かっこいいです。まさか「見よ、これが刺し盛り(さしもり)だ」なんて、居酒屋メニューみたいな見間違いをした残念な人はいませんか?
大丈夫、あなたは一人じゃありません。弊誌の編集長がお仲間です。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2019年3月号より
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