20歳vs.17歳 若手タイトルホルダー同士の激突

左/許 家元碁聖、右/上野愛咲美女流棋聖 撮影:小松士郎
第66回NHK杯2回戦 第13 局は許 家元(きょ・かげん)碁聖、上野愛咲美(うえの・あさみ)女流棋聖の若手タイトルホルダー同士の対局となった。松浦孝仁さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

* * *


■楽しい会話?

収録当日。NHKのスタジオに向かっていると、道路の向こう側に許家元碁聖の姿を見つけた。対局前の棋士には話しかけづらいもの。しかし、彼の明るい性格なら許してもらえるだろうと思い、道路を横断しかけた。そのとき、隣にいるもう一人の存在に気付いた。解説の河野臨九段だ。「あのコスミツケは…」「やっぱりそうか」。耳を凝らすと二人の会話が聞こえてきた。明らかに碁の話をしている。しかも、途切れることなく。許の声は楽しそうに弾んでいた。
NHK内の待ち合わせ場所に到着すると、すでに上野愛咲美女流棋聖の姿があった。お母さんと一緒だったという。「道に迷ったらいけないから」と上野。こちらはどんな会話をしてきたのだろう。聞きそびれたが、許と同じくこれから勝負だというのに、うれしそうな笑顔をたたえていた。
許は20歳、初出場の上野は17歳。碁を打つのが面白くてたまらない、そんな印象を強く受けた。

■融合する盤上


許は賞金ランキング上位により、1回戦はシード扱い。本局が今期NHK杯の初戦となる。
それにしても迫力ある名前だ。「家元を許す」とも受け取れる。「家」はもともと用いられることになっていて「元」にはたくさん働いてお金を稼ぐようになってほしいとの願いが込められている。彼の出身である台湾の通貨、台湾元に由来しているのだとか。
先後を決めるニギリで許は24個もの白石をつかみ、上野は奇数先の意思表示。許の先番で戦いはスタートした。立ち上がりはところどころでAI流のニオイが漂う。右下の黒3と7の二間高ジマリ、右上の有名定石の締めくくり、黒17だ。そんな中、左下で現れた白6には懐かしさを覚える。ご存じ「秀策のコスミ」だ。このような新旧の融合を経て、盤上の常識は変化、進歩していくのだろう。
下辺の折衝が興味深い。左下白26は定石のように思われているが「手を抜いても差し支えない」と河野九段。1図、黒1から3は白4以下で撃退できる。

黒29は2図、黒1、3を狙っている。続く白aに黒b以下白gの生きなら黒は大甘。白aに対し、黒に厳しい手があるかが焦点だ。

※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書・年齢はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK囲碁講座』2019年1月号より

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