店主との会話も楽しい! 日本三大朝市の町、勝浦を歩く

「いつからお店を?」「嫁に来たときから、もう50年(笑)」。そんなやり取りが楽しい時間。撮影:富貴塚悠太
海に囲まれた島国、日本。全国の津々浦々にある港町は古くから、海流が運ぶ海の幸やさまざまな文化が集積する人と物の交流の場でした。そんな港町ならではの風光が味わえるのが、各地で開かれている朝市。土地の人とのふれあいや市の歴史を通して、より深く旅が楽しめる、歩き旅にぴったりのスポットです。日本三大朝市の町として知られる千葉県勝浦の歩き方を、旅行ジャーナリストの津田令子(つだ・れいこ)さんがガイドします。

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■売り買いのやり取りで生まれる会話

朝7時。この日朝市が開催されていた遠見岬(とみさき)神社前の道には、もうたくさんの買い物客が集まっていました。元日と水曜日を除く毎日、朝6時から始まる勝浦の朝市は、毎月1日から15日まではここ下本町(しもほんちょう)朝市通りが、16日から月末までは高照寺脇に伸びる仲本町朝市通りが会場。特ににぎわう日曜には50軒ほどの露店が並び、近在の農家のお母さんたちが畑から採ってきた旬の野菜や、歩いてすぐの勝浦漁港で水揚げされた鮮魚などが、ズラリと並びます。
「勝浦は港町ですが、城下町でもあるんです。藩主の植村泰忠が商業発展のために開いた市が現在の朝市の始まりで、江戸時代には市内3か所で開かれていたそうです」
その歴史を教えてくれるのは、かつうら朝市の会会長であり、勝浦市まち歩き観光ガイド会長でもある江澤修さん。
「前回、勝浦の朝市を訪れたときに印象的だったのが、店主さんたちとの会話。50年近く店を出していらっしゃる方もたくさんいて、野菜の食べ方や漬物の作り方を聞いたり。それが楽しいんですね。そんなやり取りこそ朝市の魅力です」
旅の案内人・津田令子さんはそういって、小ぶりのクーラーボックスと小銭入れがあると便利ですよ、とにっこり。

■朝採り野菜や鮮魚も並ぶ露店

道の両側には、ざるに山盛りになった野菜や自家製の梅干し、漬物がたくさん並べられています。いずれもひと山100円、200円という値段で、町のスーパーに比べると格安! 思わず足が止まります。毎日朝5時にはこれらをトラックに積んで家を出てくるのだと、お店の方。
店主手作りのお餅やお弁当などを商うお店もあり、人気だというわらび餅を買って食べたり、炭火で炙(あぶ)った豆アジを味見したりと、まるで縁日を歩いているような楽しさ。なかでも目を引いたのが、氷の入ったトロ箱に入った丸々一尾の見事なカツオ。ここから歩いてすぐの魚市場から台車で運ばれてきたものが、そのまま店先に並べられていきます。
「新鮮だからきれいですねぇ」と、津田さんも目をみはる迫力。
「勝浦沖は、暖流と寒流がぶつかる豊かな漁場。一年中いろんな魚が獲れますよ。特に春ガツオの水揚げ基地で、正月終わりに一番船が出てから7月頭頃まで、毎日揚がります。マグロは八丈島や三宅島辺りで獲ってくるんですが、勝浦からだと1日くらいの距離ですから、近いもんですよ」と、江澤さん。
秋には芋やしいたけ、柿や栗などの果物のほか、伊勢エビやアワビが並ぶそうです。
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK趣味どきっ!海・山・町を再発見! おとなの歩き旅 秋』より

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