中野泰宏九段、AIが手を出さない小目からの小ゲイマジマリ

左/中野泰宏九段、右/李 沂修八段  撮影:小松士郎
第66回NHK杯1回戦 第17局は中野泰宏(なかの・やすひろ)九段(黒)、李 沂修(り・いしゅう)八段(白)の手合いとなった。松浦孝仁さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■先祖返り?

囲碁雑誌や観戦記に、「AI」の二文字が氾濫している。ついに囲碁の世界にも侵入してきた人工知能によって、盤上は新時代を迎えたと見る向きが多い。
ただ一方で、「昔に戻った雰囲気もある」との感想を漏らす棋士もいる。解説の黄孟正九段は序盤の石組みを「AIの影響」と指摘しつつ、昭和の大棋士、坂田栄寿二十三世本因坊と重ね合わせた。白番、李沂修八段の用いた両三々は、坂田のおはこだった。
「AIが(昔の戦法を)見直したのか」という解説の黄孟正九段の言葉にうれしくなった。さらに黒番の中野泰宏九段は、AIが全く手を出さない、小目からの小ゲイマジマリを採用。彼は流行には左右されず、好きなように打つタイプだとか。こんな意気込みを持つ棋士がいることも、何だか心を震わせる。
AIをしっかり研究している李と、我が道をひたすら突き進む中野との対決。さて、皆さんはどちらを応援するだろう。
 

■急所を巡って


早速、黒5までを確認してほしい。懐かしく思う読者は少なくないのでは? 黒1、3、5の星と小ゲイマジマリの組み合わせは、かつて大流行した。今でもアマチュアの間では人気が高い。
小ゲイマジマリは、プロの対局ではあまり見かけなくなった。AIが打たないのがその理由だ。
白2、4の両三々は、昔とは目的や狙いが大きく異なる。以前は隅を一手で確保できる特性を強く意識していた。ところが現在は、三々のポジションを「急所」と捉える考え方が浸透。だったら初めから、敵に打たれないためにも、三々を占めておこうとの意識が働くようになってきた。
なぜ三々が急所か。それは直後の白6を見れば想像できる。AIは当たり前のように打ち始めた。序盤の三々入りは悪手との人類の常識を打ち破ったのだ。続いて1図の黒1なら、白10までを李沂修八段はイメージしている。ワリ打ちにより黒の厚みは働かず、黒が甘いと見るのが現在の常識だ。

中野泰宏九段は黒7へ。白が8から12を急いだため、左上も黒の星に白が三々へ入った理屈に。以下黒29まではよくある進行だ。ここで白30が李の工夫だった。
※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK囲碁講座』2018年10月号より

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