薬味たっぷり! 華やかな秋のごちそう「さんまの炊き込みご飯」

撮影:野口健志
今年はさんまが豊漁だそうです。いつもの塩焼きだけではなく、いろいろなアレンジを試してみたいですね。坂田阿希子(さかた・あきこ)さんの食卓によく登場する「さんまの炊き込みご飯」を紹介します。

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例えば秋の夕暮れに、道すがらどこかの家の台所からふんわりと漂ってくるにおいがさんまの塩焼きだったりすると、泣きそうな気分になることがある。
金木犀(きんもくせい)の花がフワッと香ったときに感じる、なんともいえない切ない寂しさとよく似た感じ。秋が来たなぁと感じる香り、さんまの塩焼き。魚の中でも一、二を争うくらいに好きです。塩焼きのアツアツにたっぷりの大根おろしもいいし、シチリア風のパスタにアレンジするのも大好きな食べ方。
旬の時期にはできるだけ何度もさんまを食べようといろんなアレンジを考えます。最も登場回数が多いのが「さんまの炊き込みご飯」。
白いご飯が大好きなので炊き込みご飯はあまりやらないけれど、これだけは別です。秋のごちそうを一つ挙げるなら、迷わずさんまの炊き込みご飯と答えたい。私のさんまご飯の特徴は、とにかくしょうがをたっぷりと入れること。仕上げの薬味もどっさりと。これがおいしい。料理教室でもリクエストの多いメニューです。
さんまは腹に切り目を入れて内臓を除き、流水でよく洗います。水けを拭いたら尾を落として半分に切り、表面に塩をふります。そのあとはこんがりと焼いて。しっかりと焼いてから炊き上げると、香ばしさもプラスされます。
洗ったお米を土鍋に入れ、調味料とだしを合わせて注いだら、ここでせん切りのしょうがをたっぷりと。これがとてもいい香りと爽やかな食感をプラスしてくれます。上に塩焼きしたさんまを並べて、ふたをして強火にかけましょう。吹きこぼれそうになったら弱火にし、10分間炊き上げます。そのあとは火を止めてさらに10分間蒸らします。ふたをあけるとフワ〜ッとたち上るしょうがとさんまの香ばしいにおい。ああ、幸せ……。身をほぐしながら頭と骨を丁寧に取り除きます。
そしてここからがこの炊き込みご飯のクライマックス。みょうがと細ねぎの小口切りをどっさりと上にのせると、一気に華やかな雰囲気に。サックリと混ぜればさんまの脂がご飯に程よく回り、ツヤツヤとした表情です。さらにお鍋の底にいい感じのお焦げができていたら大成功! アツアツをお茶碗(わん)によそって、お好みですだちをキュッと搾りましょう。秋のごちそうのでき上がりです。
一緒に添えるなら、私の実家で定番の「大根と里芋のみそ汁」がおすすめ。大根をごく細いせん切りにし、汁より大根を食べるくらいにたっぷりと。秋の里芋はねっとりとして大根との相性も抜群です。
こんな日に大きな満月が出ていたりしたら、もう言うことなしです!
※材料の詳しい分量とつくり方はテキストに掲載しています。
■『NHKきょうの料理ビギナーズ』2018年9月号より

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