若き経営者たち10人へのインタビューから見える、賢い子供の導き方

子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか
『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』
宮本恵理子
日経BP社
1,620円(税込)
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 その年のトレンドワードを決める「ユーキャン新語・流行語大賞」で「イクメン」がトップ10入りをしたのは8年前、2010年のこと。そのころは、"子育てをする男性"というとある種の特別感があったことは否めず、そのために少数派である「イクメン」が世間の脚光を浴びたという側面もありました。女性の中には「わざわざイクメンをアピールしなくても。女性は何も言わずに淡々と子育てをしているのに」なんて気持ちを抱いた人もいるかもしれません。

 けれどここ数年、その風向きは変わってきているといってよいかもしれません。ごく自然に、普通の日常として子育てをする男性。しかも、仕事か子育てのどちらかを選ぶではなく、仕事に全力で取り組みながらも子育てにも真剣に向き合う。そんな姿をたくさん見られるようになってきたのではないでしょうか。

 本書の著者、宮本恵理子さんは1978年生まれのノンフィクションライター。主に働き方や生き方、家族をテーマにした執筆活動をおこなっているそうですが、過去に取材を通じてつながった若い世代の男性経営者たちがSNSに投稿する写真を見ていてあることに気づいたそう。そこには家族のごく普通の日常風景があふれており、けっしてイクメンアピールをするではなく、子育てを人生の一部として自然体で楽しんでいる彼らの姿があったといいます。

 そこで、次世代を担う若きリーダーやプロフェッショナルたちは、子育てにどのように関わり、どのような"人育て"に挑戦しようとしているのかに、非常に興味を感じた宮本さん。40代以下の世代の男性経営者10名にインタビューをおこない、それをまとめたものとして上梓したのが、本書『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』となります。

 学校選びは? お小遣いのルールは? 夫婦の協力体制は? 将来の職業選択にどのようなアドバイスをする? こうした質問と回答を通じて、読む側の皆さんも多くの気づきを得ることができるでしょう。

 登場するのは、早稲田大学ビジネススクール准教授・入山章栄さん、ソラコム社長・玉川憲さん、建築デザイン事務所noiz代表・豊田啓介さん、ガイア社長・中桐啓貴さんなど。ここで印象的な箇所をいくつかご紹介すると......。

 たとえば、パパ友とLINEグループを作っているというのはスペースマーケット社長の重松大輔さん。雨の日には「クルマで保育園まで送るけど、誰か一緒に乗っけようか?」なんてやりとりをしたりするのだとか。会社の事業としてはレンタルスペースや貸し会議室といった空間のシェアリングを提供している重松さんですが、私生活では「子育て」のシェアリングを実践中といえそう。また、実際の商売についてもできるだけ早い段階で子どもたちに経験させたいことから、フリマアプリ「メルカリ」を利用して家の中の不用品を売ってみるといったことも考えているといいます。

 個人向けマイホームアプリ「knot(ノット)」の開発などに携わるSOUSEI社長の乃村一政さんは、高校卒業後、吉本興業で芸人活動をしていたという異色の経歴の持ち主。現在は8人の子どもがいる大家族パパでもあり、「子育ても事業もエンターテインメント」が持論です。家庭でも笑いを通じて子どもたちとオープンにコミュニケーションできる関係を築くことを大事にしているそうですが、それは事業の成長においても同じ。驚きや感動をもって「いかに目の前の人を笑わせるか」を常に考えていると話しています。

 彼らのインタビューを通じて感じるのは、本書のタイトルにもあるとおり「子育てと経営は一緒」ということ。「一緒」は言い過ぎかもしれませんが、共通点は多いのかも。著者の宮本さんは「経営をするように子育てをして、子育てをするように経営する彼らの姿に、私はとても大きな希望を持った」と本書で書いています。

 もちろん、彼らの子育て実践法は「経営者だからできる」という面もあるでしょう。けれど、共働きの妻と連携して子どもたちの育児に奮闘し、問題が起きたら前向きに課題解決しようとする姿は普通の会社員と変わらないことがわかります。こうした若い世代の人たちが増えていけば、日本の未来も私たちが杞憂するよりもずっと明るいものになるはず。人生において男性が子育てにかかわることの豊かさを、皆さんもぜひこの一冊から受け取ってみてください。

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