アジサイの歴史、広がる品種の世界

’ミセスクミコ’はサクラのような花色を求めてつくられた、日本の鉢物アジサイの原点的品種。30年近いロングセラーを誇る。撮影:成清徹也
鉢物アジサイが日本でヒットしてから半世紀以上。今、アジサイは日本で進化しています。園芸研究家の長岡 求(ながおか・もとむ)さんに、日本におけるアジサイの歴史を教えてもらいました。

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■日本生まれの外国育ち

アジサイ、漢字では紫陽花と書きます。これは古くに野生種のガクアジサイから見いだされた手まり咲きの品種を指す名前で、その後生まれた園芸品種と区別するときはホンアジサイと呼びます。また、七変化の別名があります。咲き始めは白色で、時が過ぎるとともに水色から青色に変化し、夏には緑色に変わることからついた名前です。
現在、主に流通しているのは、ホンアジサイなどをもとに改良された園芸品種です。その品種改良は当初、フランスを中心に行われ、100年ほど昔に多くの品種が生まれました。一方、米国に渡った品種たちは一部が鉢物に仕立てられ、戦後にその生産技術とともに品種が日本に伝わり、「西洋アジサイ」や「ハイドランジア」と呼ばれました。
日本のハイドランジアの生産増加の端緒を開いた品種が′ミセスクミコ′です。昭和59年に種苗登録が申請され、温かな桃色で巨大な花房をつける手まり咲きで、一世を風靡しました。また、母の日にお母さんにプレゼントする定番アイテムになったのもこの品種が最初です。
′ミセスクミコ′のヒットを受けてさまざまな品種が登場し、なかでもガクアジサイから見いだされた八重咲き品種の「墨田の花火」と「城ヶ崎」が相次いでヒットしています。

■「西洋アジサイ」から「あじさい」へ

昭和59年以降、品種育成が普及します。また、ほぼ同時代にヤマアジサイやガクアジサイなど、日本の山野で見いだされた品種が多数コレクションされました。そして、ヤマアジサイの一品種、清澄沢(きよすみさわ)アジサイや、前記の「墨田の花火」「城ヶ崎」などが育種に使われ始めます。
その成果として登場したのが、′フェアリーアイ′などです。そして今、品種数はまもなく450を超え、母の日前後には300以上の品種が店頭に並びます。多くは国内で育成された品種で、多様な花形や花色をもつように変化しています。そろそろ「西洋」の二文字を取り、「あじさい」と呼ぶべきではないでしょうか。
■『NHK趣味の園芸』2018年6月号より

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