古都・鎌倉のアジサイ寺を訪ねて

散策路頂上からの眺め。小径を登るとふいに目の前が開け、鎌倉の町と由比ヶ浜が眼下に広がる。撮影:田中雅也
古都・鎌倉の一角に、四季折々の花で知られる美しいお寺があります。なかでも、アジサイが咲き誇る様子は圧巻。観光客はもちろん、近隣住民からも愛される風景は、どのように生まれたのでしょう。

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■アジサイを植えた理由

神奈川県鎌倉市の長谷寺(はせでら)。“アジサイ寺”の名でも親しまれる同山は、境内に40種類以上、約2500株ものアジサイが植えられ、シーズンになると次々に開花して訪れる人の目を和ませます。特に、お堂のわきから山上へと続く散策路周辺は、一面アジサイに覆いつくされて圧巻の眺め。約1か月にわたって、絵画のような風景が現れます。
「アジサイは塩害に強いといわれ、海に近い鎌倉では昔から好まれてきた植物です。長谷寺でも、以前から植えられていたものもありました。今のように多くの株を植えたのは、昭和の終わりごろ。きっかけは、土の流出防止でした」と、総務室の山﨑康史さん。
「長谷寺はもろい泥岩の傾斜地に位置しているため、かつては大雨が降ると土が流されてしまうことがありました。そこで対策として考えられたのが、斜面にアジサイを植えること。アジサイは根が細かく、土をつかむように育つとされるため、地盤を補強できるのではと期待したのです。試しに植えてみたところ、狙いが的中。その付近の土の流出がなくなりました」
そこで本格的にアジサイを植えることになり、せっかくならいろいろな種類を配して参拝者に楽しんでもらおうと、多様な品種が植えつけられました。それから約30年。今では、すっかり名所として知られるようになりました。
取材協力:長谷寺
■『NHK趣味の園芸』2018年6月号より

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