襲名披露茶事のときだけに出される特別な菓子「籔団子」

素朴な藪団子は茶席菓子の原型ともいうべきもので、次にいただく濃茶への期待をいちだんと高める 撮影:竹前 朗
藪内家家元襲名披露茶事のときだけの特別な菓子「藪団子」について、藪内家の菓子をつくる京菓子司の山口富藏社長に伺いました。

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藪団子はいつからあったかは不明ですが、砂糖を団子になすりつけて食べたと伝わっています。うちでは米粒の粗い道明寺の団子に和三盆をちょんとのせました。藪内家の茶道は伝統に則(のっと)った素朴で男性的なものなので、この菓子も一つずつ手で丸めたままの形、大きさもまちまちな素朴なものです。
何も入れない団子に添えた貴重な砂糖の甘みが効いて、その後にいただく濃茶がいちだんとおいしい、昔はそういうおもてなしだったのでしょう。今は和三盆ですが、もとは氷砂糖を細かく砕いたものを使ったのではないかと思います。当時は船のおもしとして砂糖を積んで来て、帰りに日本の銀などを積んで帰ったという話がありますし、元禄時代の菓子の本には砂糖を洗って使うと書いてあります。運ぶ途中で氷砂糖が汚れたからではないでしょうか。
茶道の菓子は注文を受けてつくるもの。襲名披露時だけの藪団子は、つくる私にとっても召し上がるお客様にとっても、一生に一度の出会いでしょう。
■『NHK趣味どきっ!茶の湯 藪内家 茶の湯五〇〇年の歴史を味わう』より

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茶の湯 藪内家 茶の湯五〇〇年の歴史を味わう―家元襲名披露茶事に学ぶ (趣味どきっ!)
『茶の湯 藪内家 茶の湯五〇〇年の歴史を味わう―家元襲名披露茶事に学ぶ (趣味どきっ!)』
NHK出版
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