今、熱い植物「原種ベゴニア」

ベゴニア・ダースベイダリアナ(撮影:NP-田中雅也)
「環境さえ整えれば気楽に付き合えるのが原種ベゴニアのいいところ」。そう語る植物採集家・長谷圭祐さんに、原種ベゴニアの魅力を聞いた。

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■熱帯雨林の奥に秘められたまだ見ぬ新種

関西で熱帯雨林や熱帯の渓流に育つ植物の人気が高まっている。関西には熱帯魚飼育や水草水槽に使う、水槽を使って育てる植物を扱う個人店が多く存在し、そうしたところから火がついていったといわれている。今回取り上げる原種べゴニアや7月号で取り上げたアグラオネマ・ピクタムもそうしたものの一つだ。
「原種のべゴニア(シュウカイドウ属)はオーストラリア大陸を除く全世界から現在2000種が記載(※1)されていますが、さらに毎月のように新種が見つかっています。未記載のものも多くこれからまだ1000以上の種が新たに見つかるのでは、ともいわれています」
そう語るのは、自身もサトイモ科をはじめ新種をいくつも発見してきた植物採集家の長谷圭祐さん。
べゴニアはこれだけ多くの種がすでにあり、見た目も多種多様。株姿や葉の形状、質感、色彩も多様なバリエーションがある。さらに新しい種類がまだまだ見つかるという発展途上の躍動感に魅力を感じる人も少なくない。
本稿記載の写真「べゴニア・ダースべイダリアナ」も、そうした新しく発見されたべゴニアの一つ。ピロード状の葉は見る角度や光の加減により、漆黒にも暗赤色にも見え、そのまわりは白〜黄色の斑で縁取られている。
「まだ、ほんの数年前に発見、記載されたばかりの種類で、まだうまく育てられないこともあります。でも、どう栽培したらよいのかわからない種類を、育てこなしていくのも、植物を育てる楽しみの一つじゃないですかね」

■高湿度の環境に合わせた植え込み資材をチョイス

上級者になればパルダリウム(※2)に挑戦してもよいが、原種べゴニアなどの熱帯雨林植物を育て始めるならまずは、ポット植えから挑戦するのが無難。
「植え込みは水ゴケのみでもかまいません。ランの鉢栽培のように固く詰めず、ふわっと柔らかく植えるのがポイント。赤玉土などを使う場合は、日向土や鹿沼土などを2〜3割混ぜて、水もちを調整したほうが成績がよいようです」
高湿度の環境での栽培には草花用の培養士は不向き。また、カビなどの原因になるため、腐葉土などの腐植質も使わないほうがよいそうだ。

■栽培には水槽が最適!

原種べゴニアの多くは湿度が高い熱帯雨林に自生。温度が下がり、暖房で湿度も下がりがちな日本の冬は苦手だ。
「冬はもちろんですが、大型にならない種なら通年、水槽の中で栽培するのがおすすめ。ガラス板でふたをした水槽でも、は虫類用のガラスケージでもかまいません。観賞には向きませんが、乳白色の衣装ケースなどでも育てられます。直射日光が当たらない明るい窓辺でも育てられますが、ちょうどよい環境がなければ、LEDライトで光を当てます。暗くて今まで植物を置けなかった場所でも育てられますよ」
高湿度が保たれる環境さえつくってしまえば、旅行などで1〜2週間の不在もOKというのもありがたいところ。
※1:新種の動植物が発見されると、論文などに記載、発表することで新種として認められる。こうした論文への記載がないものは未記載種という。
※2:ガラスケースの中などで植生を再現するテラリウムのうち、多湿〜水辺の環境を再現したものを、こう呼ぶことが多い。
■『趣味の園芸』2017年12月号より

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