モヤモヤ・クヨクヨ・イライラ...... 「なんだかツラい」をラクにする"行動"とは?
- 『マンガ ネコでもできる! 認知行動療法 ニャンだかツラい…がニャンだかタノシい?! に変わる本』
- 大野裕,ねこまき
- SBクリエイティブ
- 1,540円(税込)
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
これといった理由はないけれど毎日なんだかパッとしない、心がモヤモヤしている、なんとなくいつも不安感がある――多くの人が感じるそうしたモヤモヤ・クヨクヨ・イライラ。実は「認知行動療法」で少しラクにさせられることをご存じでしょうか。
認知行動療法とは、「現実の受け取り方」や「ものの味方」イコール"認知"に働きかけて、心のストレスを軽くしていく方法のこと。うつ病の治療法として開発され、その他の精神疾患でも効果が確認された、世界で最も多く使われている精神療法(心理療法)です。
言葉だけで読むと少し難しく感じますが、この認知行動療法を非常に分かりやすく、さらにかわいい猫のマンガ付きで紹介しているのが、書籍『マンガ ネコでもできる! 認知行動療法 ニャンだかツラい...がニャンだかタノシい?! に変わる本』です。解説は認知行動療法の第一人者である精神科医・大野 裕さん。そして猫のマンガは『ねことじいちゃん』シリーズでも人気の漫画家・ねこまきさんです。
「なんだかツラい」と感じているときに、認知に働きかけるなんて面倒くさい......と思うかもしれません。しかしそこで諦めて何もしないでいると、ずっとツラいまま抜け出せなくなってしまいます。だってそもそも人間は悲観的に考えてしまう生き物だから。
「なにか突然の出来事が起きたとき、わたしたちは、まずよくない可能性を考えて身を守ろうとします。情報が少なく、なにが起きているかすぐに判断ができないからです(中略)受け取った情報を判断し、対応するこころの動きが認知です。認知行動療法では、こころの力を生かすために、この認知の働きを上手に使えるようにしていきます」(同書より)
たとえば、人間がもつ「3大ネガティブ感情」には、それぞれに意味があります。同書によると、そのうちの1つである「うつ―喪失―退却」は、「大事なものをなくしたときに落ち込んで、あまり動かなくなる」というこころやからだの反応です。これ自体は正しい反応なのですが、その中で実際以上に大きく物事を捉えてしまうことで、必要以上に心がツラくなってしまうことが問題なのです。ツラいと感じている人の中には、心当たりがある人もいるかもしれませんね。
仕事でなにか失敗をしたとき、なんてダメ人間なんだ、こんなこともできないなんて......と落ち込んでしまったことはありませんか? そうした考えに囚われると、なにも手につかず、仕事のパフォーマンスはさらに下がり、どんどん悪循環に陥ってしまいます。
そうしたとき、認知行動療法では「感情の裏にある考えに、意識的に目を向けるように」していきます。
「極端な考えには、『いつも』『絶対』といった決めつけ言葉が含まれています。思うように進まなかったときに『いつもこうなんだ』と考えたり、『これからも絶対うまくいかない』と決めつけたりしてしまうと、こころの余裕がなくなってつらくなります」(同書より)
では、どのように改善していけばよいのでしょうか。落ち込んでいるとすべてに対してやる気がなくなってしまいますが、これは「態勢を立て直してエネルギー補給をするために必要な反応」とのこと。そのため休養も大事です。ただし、それに甘んじて閉じこもってしまうのは得策ではありません。
こうしたときに試したいのは、「少しでも楽しみや喜び、やりがいを感じられた活動を増やしていく」ことです。
「ストレッチや片づけ、マンガを読む、喫茶店で息抜き、ウインドウショッピング、部屋を飾る、メールに返事、手芸、絵を描く、キャッチボール、植物の水やり、などです。親しい人と話してほっこりする時間をもつのもいいでしょう」(同書より)
最初は面倒に思うかもしれませんが、自分が楽しい・うれしいと感じていたことを思い出して実践してみると、不思議といつの間にか不安は消えているものです。また、「なにかしなきゃ!」と無理をせず、「ぼーっと空を眺めたり、ゆっくりお風呂に入ったり、寝室でお香を焚いてゆっくりしたり、なにもしない活動」を試してみるのもOK。
ここで大切なのは、楽しいことを1つ試して全部を解決しようとしないことです。同書では「小さな喜びをシャワーのように浴びることでこころは元気になってきます」と助言します。
「気もちが楽になる行動が最初はわからないこともあります。どのような行動が役に立つかは、やってみないとわからないと考えてください(中略)なにか行動をするときには、必要な行動を細かくわけて、簡単なものから少しずつスモールステップで行動していくことも大切です」(同書より)
このように、不安感やモヤモヤは生きていく上で出てきてしまうものなのだと理解しつつ、その感情に支配されないような行動を心がけるだけで、ずいぶんとラクになるはずです。
同書では他にも、「こころを元気にする3つのC」や「自分の性格はこうやって生かすのニャ」など、読み応えのある章がたくさんあります。心に重たいものを感じている人は、これを機に同書に目を通してみてください。心が軽くなるヒントがきっと見つかるはずです。
[文・春夏冬つかさ]