"年間1万人が説明会に来る学校"の校長が教える、世界を見据えた「ミライの授業」

東大よりも世界に近い学校
『東大よりも世界に近い学校』
日野田 直彦
TAC出版
1,760円(税込)
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 成績が上がらない、学校や先生が好きじゃない、どうして勉強しなきゃいけないんだろう......そんな悩みを持っている子どもは多いかと思います。そして親は親で、「娘や息子の成績が思ったほど上がらない」「やりたいことがないと言っている」「でも、なんとか良い教育を受けさせたい」と考えているかもしれません。

 けれど、そもそも「よい教育」とはなんでしょうか。「現在の学校教育はオワコン(終わったコンテンツ)になっている」と言うのは、東京都千代田区にある千代田国際中学校の校長を務める日野田直彦氏。この学校は偏差値だけ見ればそれほど高くはないものの、生徒を海外の大学に多数進学させる実績を持ち、今では「日本で一番学校説明会に人が集まる」と言われるほど注目される学校です。書籍『東大よりも世界に近い学校』には、日野田氏が日本の未来を見据え、「本当に学校で身につけるべきこと」「自分のやりたいことを見つける方法」について記されています。

 まず第1章で日野田氏が明かすのは、「なぜいまの学校がオワコンなのか」について。今の時代、世界や社会はものすごいスピードで変化しているのに、学校のシステム自体は昔のままほぼ変わっていません。最先端のコンテンツならインターネット上にいくらでもある時代なのに、いまだに40人が教室という同じ一つの空間に集まって知識のインプットをするだけ。「日本の学校はいまだに、自己主張や主体性がなく従順で均質化した、平均的な能力をもつ人材を育てようとしている」(同書より)と日野田氏は言います。

 これからの20年後30年後の世界を見たときに、与えられた課題をただこなすのではなく、新たなものを創り出す構想力や話し合いによる問題解決能力、多様な価値観を尊重する力などが必要とされていくのは間違いないでしょう。そして、こうした力は偏差値が高いかどうかは関係がないものです。「いまの日本の学校では21世紀の社会で生きていくために必要な力を身につけることはできない」(同書より)と日野田氏は指摘します。

 では、どのような学校が望ましいのかというと、「知識やスキルとともに、自主性、主体性といったマインドセットも重視し、生徒が安心してさまざまなことに挑戦できる学校」(同書より)。「日本と世界の『いいとこ取り』をするのが最適解」だと言います。

 こうした前提のもと、第2章では日野田氏が校長としておこなってきた取り組みについて紹介。第3章では日野田氏が校長になるまでの経緯、第4章では未来を担う人たちへのメッセージ、第5章では海外進学のポイントについて紹介されています。

 正直、偏差値重視で子どもを名門校に入れ、既存のエリート教育を施したい人にとって同書は向いていないかもしれません。けれど、偏差値にとらわれることなく、これからの時代を生き抜く力を子どもに身につけさせたい、そのためにはどんな学校でどんな教育を受けさせればよいか知りたいと考える人には、参考になるポイントが多々あるかと思います。自分の子にはどのような教育を受けてほしいか、どのような学校が向いているかなど、同書は親の教育観や価値観についても考えさせられる一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]

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