恫喝や不倫!? 文豪たちの"どうかしてる"私生活、現代に通じるものがある...
- 『文豪どうかしてる逸話集』
- 進士 素丸
- KADOKAWA
- 1,430円(税込)
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芥川龍之介や夏目漱石など、"文豪"と呼ばれる人物の名前や作品を知る人は多いでしょう。最近では、太宰治『走れメロス』の一節「メロスは激怒した」を使った大喜利をSNSで楽しむ人がいたり、文豪をアニメキャラクターにした作品が人気になったりと、身近に感じている人もいるかもしれません。しかし、彼らの私生活や交友関係を知る人は少ないのではないでしょうか。進士素丸さんの著書『文豪どうかしてる逸話集』には、そんな文豪たちの知られざる素顔がまとめられています。
本書は、第一章「太宰治を取り巻くどうかしている文豪たち」、第二章「夏目漱石一門と猫好きな文豪たち」、第三章「紅露時代の几帳面で怒りっぽい文豪たち」、第四章「谷崎潤一郎をめぐる複雑な恋愛をした文豪たち」、第五章「菊池寛を取り巻くちょっとおかしな文豪たち」の五つの交友関係から構成されており、各章で一人ひとりの人物について丁寧に説明しています。味のあるイラストで描かれた相関図やプロフィール、進士さんのくだけた言い回しの解説文が非常に分かりやすいです。
たとえば、お酒に酔うと太宰治によく絡んでいた中原中也は、おろおろする太宰に"「青鯖(あおさば)が空に浮かんだような顔しやがって」と、よくわからない詩人ならではのセンスで罵倒"したそうです。また、泉鏡花は極度の潔癖症で、"豆腐の「腐」の字を見るのも書くのもいやで、「豆府」と書いていた"など、文豪ならではの逸話にクスッとさせられます。
ほかにも、太宰は芥川龍之介を好きすぎるあまり、芥川賞を受賞したくて選考委員・川端康成に"「小鳥と歌い、舞踏を踊るのがそんなに高尚か。刺す」"と恫喝したり、内田百閒は借金することを「錬金術」と呼んだり、谷崎潤一郎は妻の妹に恋したから友人に妻を譲ることに決めたり(のちにすぐ不倫)、読めば読むほど文豪の"どうかしてる"私生活に興味が湧いてきます。
また、こうしたエピソードだけではなく、太宰と中原、漱石と正岡子規の友情にホロリとさせられたり、"結核を患い何度も喀血(かっけつ)していた子規は「血を吐いても鳴き続ける」と言われるホトトギスに自分を重ね、「子規(ホトトギスの漢字表記)の俳号を使い始めます"という、披露したくなるようなマメ知識があったりと、さまざまな逸話が詰まっています。
現代にも通じる問題や恋愛の悩みを抱える文豪の姿を想像すると「素晴らしい功績を残した彼らも私たちと同じなんだな」と親近感を覚えます。本書で彼らの人間味あふれる一面を知れば、作品をより一層楽しめるかもしれません。