磯野家は土地だけで2億円の価値!? サザエさんちの"危機"が明らかに?

磯野家の危機
『磯野家の危機』
東京サザエさん学会
宝島社
1,058円(税込)
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 日曜の夜を象徴するテレビアニメ「サザエさん」。その中心として描かれる磯野家(サザエさんはフグ田家ですが)は、日本一有名な一家といっても過言ではないかもしれません。しかしそんな磯野家が、"危機"を迎えている、と指摘する著書があります。

 それが、サザエさんの作者・長谷川町子の作品を研究する団体「東京サザエさん学会」が上梓した「磯野家の危機」。タイトルからして不穏な響きですが、まもなく平成が終わろうとする現代で、ほぼ昭和スタイルの生活を営む磯野家が迎えるであろう"危機"が列挙されています。

 例えばその一つが、磯野家と現代における「中年」の定義のギャップ。同書によると、作中の会話などから推定される磯野家の家長・波平の年齢は54歳、その妻・フネの年齢は48歳とのこと。現代の著名人と並べると、波平はお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんや芸人の出川哲朗さんと、フネは女優の石田ゆり子さんと同い年ということになるのだそう(2018年執筆現在)。現代は「サザエさん」が描かれた時代と比べると、人々の栄養状態は向上し、医療も進歩し、平均寿命も長くなったため、見た目はもちろん、気持ちの上でも「中年」の定義が変わってきたのでは、と同書では指摘しています。そしてこうした変化は、磯野家の老後生活にも影響を与えるかもしれないと言います。

 定年を60歳と考え、その後、寿命まで20年生きると考えると、1000万~7000万円の資金が必要になるとも言われている現代。そうなると、まだ小学生のカツオとワカメを抱える波平は、「現代の感覚で考えれば、波平は定年まであと6年は馬車馬のように働き、ワカメが大学を卒業するまでの期間も嘱託などの雇用を望むかもしれない」と、同書ではシビアに予想を展開します。まだ幼い子どもを抱える2人には、なかなか厳しい将来が待っているようです。

 また同書の中で興味深いのが、磯野家のセキュリティー意識について触れた部分。実は磯野家は、「サザエさん」全45巻(朝日新聞社刊文庫版)の中で、通算18回も強盗や泥棒に入られているのだそう。28年という連載期間を考えると、実に1年半に一度は泥棒に入られていた計算。スラム街のような治安の悪さですが、同書によると「戦後間もない不安定な時代に集中しているわけではなく、いつの時代もまんべんなく被害に遭っている」とのことで、「特に大金持ちではない磯野家だが、マヌケな家族なのでたびたび侵入してくるのだ」とのこと。しかし磯野家に入るのはヌケた泥棒ばかりで、けが人が出たこともなければ、お金を盗まれたことすらないので、それは磯野家の強運(?)のなせるわざ、とも言えるかもしれません。

 ちなみに、「サザエさん」にこれだけ泥棒が登場する背景には、落語の影響が大きいのだとか。作者が落語好きだったということもあり、「落語に出てくるようなマヌケな泥棒は、話題として使いやすかったのだろう」と分析しています。

 しかし、今までは笑い話で済んでいた磯野家の泥棒騒動も、犯罪が巧妙化する現代ではかなり危険な状況と言えます。同書でも指摘していますが、マヌケな磯野家だからこそ、今後は警備会社のサービスへの加入が必要になるかもしれません。

 古き良き日本の家庭を描いた「サザエさん」ですが、それゆえ、現代と照らし合わせた場合には、数々の危機を迎えるかもしれない磯野家。同書ではこのほかにも様々な危機が明らかになるのですが、「磯野家は土地だけで2億円の価値! 波平なきあとは骨肉の争いに!?」「サザエのヘアスタイルをつくれるヘアサロンは今でもあるの?」「ヒロポンを使用していたと噂の磯野家は今も危険ドラッグが手放せない!?」と、目次にはかなりセンセーショナルな言葉が踊っています。のほほんとした雰囲気の家族だけに、彼らが直面するであろうシビアな現実とのギャップに驚かされそうです。

 日曜の夜にのんびりとした雰囲気を演出してくれるアニメ「サザエさん」ですが、同書を片手に観てみると、その裏にある"危機"が透けて見えるかもしれません。

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