合コン、旅行、新しい恋... 乳がんステージ4だった著者が綴る赤裸々闘病記

乳がんステージ4だった私が、それでも合コンに行きまくって救われた話
『乳がんステージ4だった私が、それでも合コンに行きまくって救われた話』
白戸ミフル
キノブックス
3,190円(税込)
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 体が元気な時ほど、意識しないのが健康の大切さ。しかしある日突然、がんを宣告されたとしたら......その大切さを痛感するとともに、多くの人がこれからの闘病生活に不安を抱くのではないでしょうか。

 35歳の時に乳がんと告知された白戸ミフルさんも、告知されたときには大きなショックを受け、涙が止まらなかったと言います。がんの進行が進んでいるとされる「ステージ4」と告げられた白戸さんは、精神不安定になったり、抗がん剤治療で心身ともに苦しんだりと、数々の苦難に遭遇します。普通ならば、ここから壮絶な治療との戦いや、闘病の葛藤が始まるのですが、白戸さんのデビュー作となったコミックエッセイ『乳がんステージ4だった私が、それでも合コンに行きまくって救われた話』では、タイトル通り、闘病中の白戸さんの意外な行動が描かれていきます。

 同書で描かれるのは、抗がん剤治療中にも関わらず合コン通いを続け、飲酒、海外旅行、さらには新しい恋までスタートさせて......という、白戸さんの破天荒な行動の数々。でもこうした行動の背景には、白戸さんの"あるモットー"が。

 実は20代のころから合コン好きで、健康だった時は週3、4は当たり前の合コン三昧だったという白戸さん。さらに海外旅行やクラブイベント、クルージングなどにも繰り出し、いわゆる"リア充"なプライベートを送ってきました。そんな白戸さんも、がんと告知されてからはつらい闘病生活が始まるのですが、その一方で決してあきらめなかったのが"リア充"だったころのように毎日を楽しむこと。「がんにストレスは良くない」をモットーに、行動が制限される中、自身が楽しいと思えることをしようと務めます。

 抗がん剤治療を始めた白戸さんは、全身の毛が抜け落ち、吐き気にみまわれたり、免疫力が落ちて高熱を出したりと、数々のつらい症状に見舞われますが、その一方で「想定外のこと」を喜ぶポジティブな姿勢も見せます。例えば、吐き気による食欲減退はつらいですが、そのおかげで痩せて顔がすっきりし、目が大きくみえるように。さらに、美脚やくびれも手に入れ、痩せていたころの服が入るようになったと喜びます。また、髪やまゆ毛、まつ毛が抜けてしまうと、そこは努力でカバー。自然に見えるアイブロウをたくさん試し、つけまつげはすいて使うことで、自然なまつげに見せるなど、試行錯誤を重ねていきます。髪は、通販などで安いウィッグを取りそろえ、ショートからロングまで様々なヘアスタイルを楽しむように。さらに全身の毛が抜け落ちたことで、全身脱毛をしたような状態になり、合コンに行くと「肌キレイだね」と褒められるようにもなったのだとか。

 また、がんになる前は結婚にあせり、前のめりになっていた合コンが、闘病中は自然に人との会話を楽しめるようにもなったと言います。以前よりきれいになり、そして前のめりの姿勢がなくなったことで、闘病中の合コンで白戸さんは自然とイケメンを引き寄せるようになっていったのだそう。

 苦しい闘病生活の中に楽しみを見いだしていく白戸さんですが、そんな中でも、患者ならではの大変さを経験します。合コンで理想の相手に巡り会うも、相手に闘病中であることを告げられずに悲しい結末を迎えたり、カラオケではめを外してウィッグが取れてしまったり......。それでも前を向いて自分のしたいことに邁進する白戸さんは、かつて抱いていた「漫画家になりたい」という夢にもチャレンジ。このコミックエッセイを描き上げ、その夢まで叶えてしまうのですから、その行動力には脱帽です。

 現在は3カ月に1度の通院を続けつつ、根治を目指しているという白戸さん。巻末では、今では「がんになって良かったとすら思う」とまでつづっています。そして、つらいとされるがん治療も「気持ちひとつで楽しく乗り越えることができる!」というメッセージを送っています。この言葉は病と闘うことだけではなく、人生のあらゆる局面で言えることかもしれません。これまでにない破天荒な"がんサバイバー"の姿からは、多くの学びがありそうです。

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