ワンピースのサンジに学ぶ「生きる力」
- 『『ワンピース』に生きる力を学ぼう!』
- 平居謙
- データ・ハウス
- 990円(税込)
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1997年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている人気マンガ『ONE PIECE』。迫力ある作画だけなく、数々の名セリフも印象的な作品で、4月にはセリフ集『ONE PIECE STRONG WORDS』(集英社)も発売され話題になりました。
そうした作品を彩る名セリフは、主人公のルフィだけでなく、彼の周りに集まる個性豊かな仲間たちにも多くあります。詩人であり空手家の平居謙さんは、書籍『「ワンピース」に生きる力を学ぼう』(データ・ハウス)のなかで、彼らの言葉から「生きる力を学んだ」と述べています。
例えば、闘うコック・サンジの言葉。作品の初め、ルフィたちの船には料理人がおらず、コックの確保は急を要する課題でした。そんなとき、海上レストラン「バラティエ」で出会ったのがサンジでした。しかし、強引に仲間に引き入れようとするルフィに、サンジはなかなか首を縦に振りません。
サンジがルフィの申し出を固辞し続ける理由は、海上レストランが襲われた際に彼が叫んだ次のような言葉で明らかになります。
レストランは渡さねェ!!
クソジジイも殺させねェ...
たかがガキ一匹いかすためにでけェ代償払いやがったクソ野郎だ
おれだって死ぬくらいのことしねェと
クソジジイに恩返しできねェんだよ!!!!
クソジジイというのは口の悪いサンジ独特の言い方で、「赫足のゼフ」という元海賊の恩人を指しています。かつて、ゼフは少年時代のサンジを守るために海に飛び込み、共に孤島に流されました。しかし、そこでゼフはサンジに食料をすべて渡して、自分は自分の足を食べて飢えをしのぎました。そして、無事に生き延びた2人が後にオープンしたレストランが「バラティエ」だったのです。
平居さんはこうしたサンジの生き様に、多くの困難を抱える現代人にとっての理想的な生き方を見出しています。サンジのような境遇は滅多にないでしょうが、若者が成長していくには心のどこかで「師匠」と慕える人物が必要なもの。しかし、人間関係が希薄になりがちで、年長世代と年少世代の意思疎通が難しくなっている近頃では、そうした存在を見つけるのは容易ではなくなっています。
ですが、何も全面的に信頼できる人物でなくともよいのです。その時々に応じて、目標を見つけ、その人を追い越そうと頑張る。それだけでも、自分一人で生きるより得るものは大きいのではないでしょうか。