なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?
- 『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか? (メディアファクトリー新書)』
- 中町綾子
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KARAや少女時代をはじめとするK-POPにより再び大きな盛り上がりを見せる韓流ブーム。多くのアーティストが来日し、韓流ドラマが全盛だった2000年代後半に匹敵する人気を得ています。
そんな韓流ブームの火付け役となったドラマ『冬のソナタ』。2003年にNHKBS2、そして翌年にNHK総合で再放送され、F2層(35~49歳女性)を中心に爆発的なヒットとなりました。多くの日本人を熱狂させたこのドラマの魅力とは、一体何だったのでしょうか。
「冬のソナタというドラマ自体には、特に真新しい表現や展開があったわけではない」と語るのは、日本人とテレビドラマの関係を分析した書籍『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか?』(メディアファクトリー)の著者・中町綾子さん。
中町さんの分析は逆説的で、「新しくないことこそが魅力」だったと言います。また、それを裏付けるように、視聴者から寄せられる声も「懐かしかった」というものが多かったそう。
『冬ソナ』のヒットを支えた30代以上の女性には、往年のトレンディードラマや少女漫画といった共通のメディア体験があり、その記憶が「懐かしかった」という共感を呼んだのでは、と中町さんは言います。
例えば、『冬ソナ』で描かれるヒロイン像は、1970~80年代頃の少女漫画を彷彿とさせます。また、出生の秘密や敵役の存在、病気や事故をストーリーの軸とするドラマ作りは、70年代の少女漫画や70~80年代の大映ドラマの定番とも言える手法でした。そして、ロケーション撮影を多く盛り込み、凝ったカメラワークで心情を盛り上げる映像表現は、90年代のトレンディドラマが得意とするものでした。
つまり、『冬ソナ』とは、放送当時30代後半だった女性が、少女時代から20代にかけて慣れ親しんだドラマや漫画の「お約束」を、ふんだんに詰め込んだドラマだったと言えるのです。
『冬ソナ』に熱をあげた女性達は、知らず知らずのうちに、かつて経験したメディア体験の記憶を辿り、忘れかけていた「ドラマを見る楽しみ」を見出したのかもしれません。