新潮
- 『新潮 2010年 09月号 [雑誌]』
- 新潮社
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今年1月17日に発表予定の第144回芥川賞。先日、1月5日付で同賞の候補となる5作品が発表されました。
そのなかで、現在「最有力候補作」と称されているのが、朝吹真理子氏の「きことわ」。同作品は『新潮 2010年9月号』に掲載されたものですが、その掲載誌が現在完売状態で、入手困難になるという事態になっています。
まず、版元である新潮社のオフィシャルサイトでは、現在「品切れ」の表示が。さらに、ネット書籍販売最大手である「amazon」では、「現在お取り扱いできません」。また「yahoo! ブックス」においても、同様に「品切れ」と表示されている状況です。一般の大型書店はどうかと都内の大手書店を回ってみても、『新潮 2010年9月号』は入手できない模様。
もっとも、他の候補作・穂田川洋山氏の「あぶらびれ」が掲載された『文學界2010年11月号』、小谷野敦氏の「母子寮前」が掲載された『文學界2010年9月号』も現在ネット上では品切れ中。ただ、『文學界』のバックナンバーは全体的に2010年刊行のものは品薄なのに対し、『新潮』は9月号以外のバックナンバーはほぼそろっているだけに、異例の事態と言えそうです。
朝吹真理子氏は、現在慶應義塾大学の修士課程文学研究科で、近世歌舞伎を専攻する26歳の女性。2009年にデビュー作「流跡」で脚光を浴びたのち、2010年にBunkamuraが主催する20回ドゥマゴ文学賞を受賞しています。若くしての受賞というだけでも驚かれるのに、さらに注目なのは彼女の家族構成。父は詩人でフランス文学者の朝吹亮二氏。祖父はフランス文学者の朝吹三吉氏。さらに大叔母は、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』などの翻訳で知られるフランス文学者の朝吹登水子氏で、ノーベル化学賞を受賞した野依良治氏は親族関係にあたり、まさに学術界のサラブレッド的存在。それだけに、今回の彼女の芥川賞ノミネートに期待が高まるのは当然なのかもしれません。
もしも朝吹氏が受賞すれば、綿矢りさ氏、金原ひとみ氏、川上未映子氏に続く若手美人女流芥川賞作家の誕生となります。そうなった時には、掲載誌の入手はいま以上に困難になる可能性も。同作品を読むには、受賞作が掲載される『文藝春秋』が発売される日を、首を長くして待つほかないのかもしれません。