連載
続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!

第14回 『スポットライト 世紀のスクープ』レイチェル・マクアダムス インタビュー

『スポットライト 世紀のスクープ』のレイチェル・マクアダムス

映画情報連載「続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!」の14回目は、第88回アカデミー賞で作品賞&脚本賞をダブル受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』のレイチェル・マクアダムスに直撃取材! 複数の神父による児童への性的虐待をカトリック教会が組織ぐるみで隠蔽した衝撃スキャンダルを暴くボストン・グローブ紙の実在メンバー、サーシャ・ファイファーを熱演! その静かなる名演が評価を集め、アカデミー賞の助演女優賞にもノミネート。真のジャーナリズムを知ったというレイチェルに映画のことを聞く。


――真のジャーナリズムについて再考を迫られるような骨太な内容が感動的ですが、実在のジャーナリストを演じてみていかがですか?
 
映画のなかでは、彼女の私生活はそれほど描かれないの。実際の彼女に会っても仕事が先で、プライベートは二の次の人だったわ。サーシャも家人が寝る時間に帰るので、夫と一年ほど会ってないとかザラだったって(笑)。だから、円満じゃない家庭もあるそうよ。最終的に記事が書けるまで時間がかかる、それを盲目的に信じて日々続けていかなければいけない仕事なの。局長役のリーヴ・シュレイバーのセリフで、「我々は全員、暗闇の中で転びながら手探りで探しているんだ」ってあるけれど、真実を見つけようとする心が素晴らしいと思ったわ。


――日本のマスコミという似たような世界におりますが、確かに巨悪を暴いていく使命感と正義感には頭が下がるような思いで観ていました。
 
この映画でジャーナリストについて学び、一筋縄ではいかない仕事ということ知ったわ。それがいま失われていっているかもしれないけれど、素晴らしい職業よ。彼らがいかに影のヒーローかを実感したの。だから、この映画を観てもらうことで勢いづいて文字どおり、スポットライトが当たっていくことがうれしかった。普段、彼らの認知されない仕事を知ってもらえた。ジャーナリストは言葉をいくら尽しても足りないくらい、重要な仕事なのよ。


――先ほどのリーヴ・シュレイバーだけでなく、スポットライト班のメンバーも素敵でした! 皆さん演技派ですが、共演はいかがでしたか?
 
そのチームを含め、全員素晴らしいキャストよね。おそらく過去で一番、最高のキャスト! 皆でジャーナリストの足跡をたどって、本当の家族のようになったわ。それほどの密なコラボレーションがあった現場だったけれど、日々のお笑い担当はマーク・ラファロよ(笑)。彼から学んだことはシリアスな題材でも、現場で楽しい思いをしていいということ。監督(トム・マッカーシー)もマークと似ていて、現場のトーンを軽めにしてくれた。ヘビーな題材なので、気持ちがアガるようにしてくれたのね。ここまで楽しい現場の場合、たいがいわたしの作品ではデキがよくないことが多いけれど(笑)、こんなに素晴らしい作品も生まれることがあるんだと思ったわ。

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――ところで全然関係ない話ですが、アカデミー賞の授賞式会場で着ていたグリーンのドレスも素敵でしたが、いつもレッドカーペットの時の衣装は何を基準に決めていますか?
 
長いこと一緒に洋服選びをしてくれる人がスタイリストのチームにいて、わたしのテイストもよくわかっていてくれている。ある程度、彼らがセレクションしたものを着ているけれど、そこには新しいチャレンジングな要素も入っていることがあって。役柄にワクワクすることと同じように、そういう新しい挑戦がファッションにもあるの。


――最終的な決め手は???
 
決め手はいつまでも着ていたいような服で、着たまま寝ちゃいそうと思うものを選んでいるわ(笑)。オスカーの時には、どれだけほかのドレスを試着してみても、「もう一度あの緑を着させて」と思ったので、あのドレスにしたの。


――今日はありがとうございました! この感動作が、日本でも多くの人に届くことを願い、結びの言葉に代えさせていただきます!
 
被害者たちにとって神父は神にも近い大きな存在だから、声を上げることができなかったのよ。そういうことをシリアスに描いた作品に出て、こうして世の中の人たちの評価を得ていて、本当に光栄に思います。わたし自身にとっても一生に一度のめぐりあわせだったと思うけれど、二度目を目指して探してみたいと思う。決して派手ではないけれど、しっかりと観てほしい作品です。

(取材・文/鴇田崇)

***

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<STORY>
2001年夏、ボストン・グローブ紙に新編集局長のマーティ・バロンが着任。アウトサイダー気質のバロンは、地元では誰もがタブー視するカトリック教会の権威にひるまず、ある神父による性的虐待事件を詳しく掘り下げる方針を打ち出す。その担当を命じられたのは、独自の極秘調査に基づく特集記事欄≪スポットライト≫を手がける4人の記者たち。デスクのウォルター"ロビー"ロビンソンをリーダーとするチームは、事件の被害者や弁護士らへの地道な取材を積み重ね、大勢の神父が同様の罪を犯しているおぞましい実態と、その背後に教会の隠蔽システムが存在する疑惑を探り当てる。やがて9.11同時多発テロ発生による一時中断を余儀なくされながらも、チーム一丸で大罪を暴くため闘い続けるが......。


映画『スポットライト 世紀のスクープ』は、全国大ヒット上映中!
配給:ロングライド
(C) 2015 SPOTLIGHT FILM, LLC

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鴇田崇(ときた・たかし)

1974年生。国内最大級のアクセスを誇る総合映画情報サイト「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在はフリー。年間延べ250人ほどの来日ゲスト、俳優、監督への取材を行い、雑談のような語り口で相手のホンネを引き出すスタイルは、一部の関係者に定評がある。史上もっともアガッたインタビューは、あのM・ナイト・シャマラン監督に「キミの体からは気が出ている!」とホメられたこと。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。

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