連載
続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!

第13回 『ズートピア』クラーク・スペンサー(プロデューサー)&ジャレド・ブッシュ(脚本/共同監督)インタビュー

映画『ズートピア』のクラーク・スペンサー(プロデューサー/写真右)&ジャレド・ブッシュ(脚本・共同監督/写真左)

映画情報連載「続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!」の13回目は、現在大ヒット公開中の映画『ズートピア』のクラーク・スペンサー(プロデューサー)&ジャレド・ブッシュ(脚本/共同監督)の二賢人に直撃取材! 全世界のみならずココ日本でも驚異的な盛り上がりで、興行収入50億円達成も射程圏内に入ったという評価も出ているほど! これまでのディズニー映画では難しいと思われるような内容に、熱狂的なリピーターも後を絶たないとか! 傑作と評してよい『ズートピア』がどのようにして誕生したか話を聞いた。


――日本でも評判がめちゃくちゃいいですよ! ジュディとニックのバディー感をはじめ、キャラクターが立っていましたが、どのように制作を進めたのでしょう?
 
ジャレド:最初からキツネのニックを入れようと思っていたけれど、そもそも僕たちはキツネに対して先入観があるよね? ずる賢いとかね。それは面白いスターティングポイントだったが、実際に生態を調べてみると、とても頭がいい。先を読み、順応性もある。ニワトリ小屋に放り込めば、すべて殺すと思うでしょう? ところが殺すにしても残虐だからではなく、後で食べるためバラバラにして保存まで行う。そういう頭が回る奴なのさ。

クラーク:人間的な要素を入れる時にジュディとは違い、ズートピアに長年暮らしている、世慣れていることにしたよ。最初はジュディのように楽観的だったかもしれないが、己がキツネということだけで偏見による意地悪を受け、信用してもらえなかったことが多々あっただろうね。その結果、いまの"キツネとして生きる"ニックになってしまった。でもジュディと出会うことで、そもそも彼の中にあった善の心が出てくるわけだ。

ジャレド:彼はさんざんジュディをからかうが、それは悪意に満ちたからかいではなくて、どこか彼女が好きで仕方がない、どこか自分と似ているという気持ちがあるからで、あのようにからかうのだと思う。さんざんヒドイことを言いあうけれども、心の中では大好きで仕方がないという設定にしたかった。

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ウサギのジュディと、キツネのニック。


――いま思うと、微妙な表情で感情が読み取れますよね!

ジャレド:ディズニー・アニメーションには世界最高峰のアニメーターたちがいるので、彼らのおかげだね。すごく繊細な表情を無数に生み出すことが可能だよ。人間と同じような感受性をジュディやニックに投影することで、人間が彼に共感できるわけだ。しかもニックはただ悪いことをしているだけじゃなくて、彼には深みがある。彼には歴史もあって、それをわかるように微妙に描くことは本当に難しい作業だった。

クラーク:よく彼の表情を観ていくと、ジュディに対して100パーセントの否定はしていない。つまり、その表情の中で少しだけ受け入れることや、からかったりしている。何かを否定する前に一瞬彼女の言うことを聞いていて、それで彼の性格上、ちょっとからかってやろうかってことにとりあえずなる(笑)。でも、少し間もあるだろう? ちゃんと彼女を真面目にとらえていて、受け入れている部分があると思う。そういう本当に人間的な部分があって、ニックが人気を集めていると思うよ。


――それにしても非の打ちどころがない内容で、ディズニー映画史でも転換点になる作品だと思いましたが、プロジェクトを進める上で一番気をつけたことは???
 
クラーク:このサイズのスケール感で、まったく異なるタイプの動物が64種類も登場するからね。そして、それぞれが固有の毛を再現していて、サイズに合わせてさまざまなドアまでも登場するわけだ。こういうことを映画として全部やりたいということになると、可能な限り頭を働かせてプロデューサーとしては効率がいい方法を考えなくちゃいけない。たとえば、今まで使われていない新しいテクノロジーの開発とかだよね。

ジャレド:いつ開発を始めれば間にあうかとか、リサーチもどれくらい早く始めれば間にあうかとか、そういうスケジューリングも彼の仕事だね。何をいつどうやってやるのか、これだけの規模なので全部事前に考えなくてはいけない。それと同時に監督たちはストーリー開発を手掛けていて、東京のようにすでにある街ではなく、ズートピアはゼロから作り上げる必要があったので、ひとつのチームとしてマネージメントする必要があった。

スペンサー:そのスケジュール調整も重要だが、同時に関わっている人たちに夢を見てほしいとも思っていたよ。それをどういう風にバランスを取るかが大切でね(笑)。だから皆にはどういうインスピレーションを得て、どういう風に表現したいなどと、どんどん意見を言ってほしいわけだ。すべてを叶えてあげたいが、同時にスケジュールや予算などの現実もあるので、そのバランスが難しいよね。

ジャレド:プロデューサーはギャラを工面するために、いろいろなところでクッキーを売って資金を工面していたよ(笑)!


――本当ですか? それって、アメリカン・ジョークってやつですよね???
 
ジャレド:そうさ! アメリカではガールスカウトがクッキーを売っていてね。


――さて、最後になりますが、友だちがいなくて、デートで映画も誘えないような男たちに何か言ってあげてくれますか???
 
ジャレド:孤独だなあ(笑)。僕は男っぽい映画が好きなので、そういうシーンを入れたので、そこに注目してほしいかな。

スペンサー:音楽もいいよ! 日本版では主題歌「トライ・エヴリシング」をDream Amiさんが歌っているからね!

ジャレド:少なくとも現実逃避ができるはずだ。動物たちの世界を観て、でもいつの間にか自分の世界のような現実を知るはず(笑)。

スペンサー:たくさん笑えるが、同時に犯罪ものでもある。事件を解決していく話って、言うほどアニメーションで観ないだろう? 意外性があると思う。観ていると自分で捜査している気分になるよ(笑)!

(取材・文/鴇田崇)

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<STORY>
動物が人間のように暮らす大都会、ズートピア。誰もが夢を叶えられる人間顔負けの超ハイテク文明社会に、史上最大の危機が訪れていた。立ち上がったのは、世の中をより良い場所にしたいと夢見る新米警官ウサギのジュディ。街で出会った夢を忘れたサギ師のニックを相棒に彼女は奇跡を起こすことができるのか......。『アナと雪の女王』『ベイマックス』のディズニーが"夢を信じる勇気"にエールを贈る感動のファンタジー・アドベンチャー!

映画『ズートピア』は、大ヒット上映中!
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C) 2016 Disney. All Rights Reserved./Disney.jp/Zootopia

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鴇田崇(ときた・たかし)

1974年生。国内最大級のアクセスを誇る総合映画情報サイト「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在はフリー。年間延べ250人ほどの来日ゲスト、俳優、監督への取材を行い、雑談のような語り口で相手のホンネを引き出すスタイルは、一部の関係者に定評がある。史上もっともアガッたインタビューは、あのM・ナイト・シャマラン監督に「キミの体からは気が出ている!」とホメられたこと。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。

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