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映画ジャーナリスト ニュー斉藤シネマ1,2

【映画を待つ間に読んだ、映画の本】第20回 劇場用パンフレット「マッドマックス/怒りのデス・ロード」「若尾文子映画祭/青春」〜日本中の映画館に電話してでも確保せよ!!

映画『マッドマックス/怒りのデス・ロード』パンフレットの表紙

●特殊な流通形態をたどる、パンフという出版物。

 久々に何か面白いパンフを・・と探したところ、もうこれしかない!! ここまでやるか!? やるんです!! とばかりに、どえらいパンフが登場した。『マッドマックス/怒りのデス・ロード』。そもそもこの映画の出来が凄い!! 伝説の『マッドマックス』シリーズを30年ぶりに甦らせて、さてどんな作品になるか・・といった鑑賞前の不安を、見事なまでに吹き飛ばしてくれた、これは超弩級の大傑作。見る者すべてを熱くする・・と言っても良いだろう。

 その『マッドマックス/怒りのデス・ロード』の劇場用パンフレットが、目下売り切れ状態とか。どこの映画館に行っても在庫なし。追加分入荷不明ってことらしい。映画のパンフという商品は、一般の書店では扱われない、非常に特殊な流通経路で世に出るからして、映画館で買わないと次に手に入るチャンスがない。特に地方都市で上映終了後、入手機会が少ないのは由々しき事態。なんとかならないもんかいな。

 ついでに説明すると、映画のパンフは配給会社が作っているのではなく、主幹興行会社、つまりチェーンマスターと呼ばれる中心的映画館を経営する会社の関連会社や親会社の事業部門が(紛らわしいな)発行していることが多く、例えば『マッドマックス・・』ならば新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーを経営する松竹マルチプレックスシアターズの親会社である、松竹事業部の出版商品室が編集・発行している。

 ただ、こうした特殊な流通プロセスがまた、劇場用パンフという日本にしかない商品の、得がたい個性に結びついていたりするのもまた事実。つまり配給会社というところは、映画を公開するだけでなくヒットさせなくてはならない。『マッドマックス・・』ならば、その作品のアピールすべきポイント、作り手たちが力を入れたのはどこであるか。それを世間に情報発信して、映画の興行価値を上げるのがお仕事。ところが劇場用パンフを編集する部署というのは、配給サイドではなく興行サイドに所属することから、作り手サイドではなく映画を見た観客サイドの視点を、出版物に反映することが出来るのだ。


●凄まじい情報量!! ガイドブックでありファンブック。

 では『マッドマックス/怒りのデス・ロード』の劇場用パンフに、どこまで"観客としての視点"が反映されたかといえば、それはもう文句なし!! このパンフはもう、『マッドマックス』ファンによるファンブックでありガイドブックであり、映画を詳しく解析するための攻略本、リピーター育成ブックである。映画に描かれていないそれぞれのキャラクターのバックグラウンドはもちろん、画面にチラと映っただけのメカを徹底的に解説していたり、ジョージ・ミラー監督のインタビュー、過去の『マッドマックス』シリーズのエピソード、データもばっちり掲載されている(『マッドマックス2』の日本公開月日が間違っているのは惜しい)。とにかく凄まじいまでの情報量!! 『マッドマックス/怒りのデス・ロード』という映画に燃えた、あるいは感動の涙を流したという人、もっともっとこの映画のことを知りたいという人たちは、何が何でも入手することを、強く、強くお薦めする次第である。

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『マッドマックス/怒りのデス・ロード』パンフレットより

 かくなる上は、オフィシャルサイトで上映中の映画館を調べ、片っ端から電話してパンフがあるか確認し、あるとなったら入手すべく交渉するべし。イモータン・ジョーからわずかな水を恵んでもらうのではなく、自らフューリー・ロードを全速力で駆け抜けて、この熱い一冊を手に入れるのだ!!

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『マッドマックス/怒りのデス・ロード』パンフレットより

●妖艶なあやや、キュートなあやや♡・・。

 『マッドマックス/怒りのデス・ロード』とは打って変わって、現在角川シネマ新宿で開催されている「若尾文子映画祭/青春」のパンフレット。これがなかなか楽しい出来だ。「楽しい」と評したのは、デザインが遊び心に富んでいて、とても良いのだ。表紙の妖艶なあやや♡(わしら若尾文子ファンは、彼女のことをこう呼ぶのだ)、裏表紙のキュートなあやや♡。特集上映故に、たくさんの作品の解説を限られたスペースに納めなくてはいけないところを、無理なくコンパクトにまとまっている。いわば、あやや♡写真集とあやや♡出演作品解説が一冊になったような、お得なパンフ。これも上映中の映画館で入手すべし。

(文/斉藤守彦)

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「若尾文子映画祭/青春」パンフレットの表紙

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「若尾文子映画祭/青春」パンフレットより

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斉藤守彦(さいとう・もりひこ)

1961年静岡県浜松市出身。映画業界紙記者を経て、1996年からフリーの映画ジャーナリストに。以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「宇宙船」「INVITATION」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」等の雑誌・ウェブに寄稿。また「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」等の著書あり。最新作は「映画宣伝ミラクルワールド」(洋泉社)。好きな映画は、ヒッチコック監督作品(特に『レベッカ』『めまい』『裏窓』『サイコ』)、石原裕次郎主演作(『狂った果実』『紅の翼』)に『トランスフォーマー』シリーズ。

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