『Everybody Wants to F*ck Me』は現代の「いい男」を皮肉る異色のダークコメディ
『Everybody Wants to F*ck Me』©Courtesy of TIFF
『キングスマン』シリーズや『ロケットマン』などで知られる英国俳優タロン・エガートンが主演を務めるダークコメディ『Everybody Wants to F*ck Me(原題)』が、第51回トロント国際映画祭で上映されました。
本作でエガートンが演じるのは、デートアプリで出会いそうな、いわゆる「いい人」。フェミニズム文学を読み、女性の話によく耳を傾け、ヨガも実践するなど、女性にとって「いい相手」になろうと努力しています。
そんなアダムは、あるバーでソフィアという女性と出会います。しかし、この出会いをきっかけに、アダムの人生は大きくチェンジ。なぜか周囲の女性たちが、次々とアダムに積極的なアプローチをするようになるのです。
女性に好かれるために必死だった男性が、今度は女性から次々とアプローチされ、困惑していく......。一見するとちょっと羨ましくも思えるような状況ですが、アダムにとっては次第に笑っていられない事態になっていきます。そして、なぜソフィアとの出会いを境に、アダムの人生が一変してしまったのか。その理由が明らかになると、物語は「女性にモテすぎて困る男」というだけでは片づけられない、予想外の方向へと進んでいきます。
現代のデートシーンや、「女性にとってのいい男性」というイメージを皮肉った本作。コミカルな展開に思わず笑ってしまう一方で、徐々に不穏な空気が漂い始め、思わず恐怖を感じる瞬間も。アダムを演じるタロン・エガートンの演技も見どころです。何が起きているのか分からず戸惑う表情から、なんとかこの状況を切り抜けようとする姿まで、コミカルさの中にじわじわと恐怖が入り込んでくる感覚を見事に表現しています。
笑えるのに、どこか怖い。そんな独特のバランスを持った『Everybody Wants to F*ck Me』。日本で公開されるかどうかは現時点では不明ですが、これまでとはまた違ったエガートンの魅力を見ることができる一本でした。
(文/齋藤彩加)
©Courtesy of TIFF