もやもやレビュー

アルツハイマー病と向き合う家族を描く2Dアニメーション『Tangles』

2026年9月10日から20日まで、カナダでは、第51回トロント国際映画祭(TIFF)が開催されました。同映画祭では、リア・ネルソン監督の長編デビュー作『Tangles(原題)』が北米プレミア上映。本作は、サラ・リービットのグラフィック・メモワール『Tangles: A Story About Alzheimer's, My Mother and Me』を原作とした、手描きによる2Dアニメーション映画です。

本作の舞台は1990年代のサンフランシスコ。主人公のサラは、イラストレーターとしてのチャンスをつかみ、恋人ドニモとの関係も順調でした。そんな矢先、母親ミッジがアルツハイマー病を発症。家族は突然突きつけられた現実を受け入れることができず、サラもまた、母と過ごすためにドニモとの生活をいったん離れ、家族のもとへ戻ることになります。

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人生の目標としていたことが、ようやく手に入るかもしれない。そんなタイミングで、突然やってきた母親の介護。しかも、これまでたくましく、自分を導いてくれた母親が少しずつ変わっていく姿を見るのは、決して簡単なことではありません。一体、何が起こっているのか......。そんな答えのない悩みに頭を抱えさせられたまま、母親の病状は少しずつ、そして確実に悪化していきます。

母との記憶、家族との絆、そして愛。本作が描くのは、アルツハイマー病という病そのものだけではありません。病気になった本人だけでなく、その周囲にいる家族が何を感じ、どう向き合っていくのかという物語でもあります。
モノクロを基調とした2Dアニメーションで描かれる本作ですが、記憶や感情が揺れ動く瞬間には、アニメーションだからこそ表現できる大胆なイメージが現れ、白黒を越えた色とりどりな物語として強く印象に残りました。そして、重いテーマを扱いながらも、決して"悲しみ"だけに焦点を当てていないのが本作の魅力。実際、上映中の客席からは、笑いが起こる場面もあれば、時折涙をすする声も聞こえてきました。サラと自分を重ね合わせ、母親との思い出や、家族と過ごした時間を思い返さずにはいられない作品でした。

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さらに、本作は声優陣も豪華。サラ役をアビ・ジェイコブソンが演じるほか、母ミッジ役にジュリア・ルイス=ドレイファス、父ロブ役にブライアン・クランストン、恋人ドニモ役にサミラ・ワイリー、そしてセス・ローゲン、ビーニー・フェルドスタイン、サラ・シルヴァーマン、ボウエン・ヤン、ワンダ・サイクスらが参加しています。

TIFFではセンターピース部門で上映され、一般上映も注目を集めた『Tangles』。日本での公開については現時点で未定ですが、日本公開に期待したいです。

(文/齋藤彩加)

© Courtesy of TIFF

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