もやもやレビュー

平等と公平であることの難しさ『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

ザ・スクエア 思いやりの聖域(字幕版)
『ザ・スクエア 思いやりの聖域(字幕版)』
クレス・バング,エリザベス・モス,ドミニク・ウェスト,テリー・ノタリー,リューベン・オストルンド
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

まず、タイトルに違和感を感じるだろう。この「ザ・スクエア」とは、参加型のインスタレーションの名前。主人公である現代美術館のキュレーター、クリスティアン(クレス・バング)が、取り掛かっている作品の名前なのである。その作品の上に立った者は「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」というコンセプトだ。広告代理店のスタッフはインパクトに欠けると訴える。

そんなある日、クリスティアンは財布を盗まれてしまう。そのことで頭が一杯になってしまったクリスティアンは、代理店の意表をついたプロモーションを考えるまもなくテキトーに許諾してしまう。さらに、スリの汚名を被されたと激怒する少年も現れ、彼の人生は思いも寄らぬ方へ進んでいく...。しかも、そんな様子を娘たちに目撃されていて......。

世の中に溢れる理不尽を描いていると思いきや、実は彼自身にもそういった要素がある。主人公はカードを裏返すように、どんどん深みにはまっていく。あえての演出なのだろうが、イライラするシーンも多く、非常にリアクションに困る不思議な作品なのである。それに「自分だったらどうする?」「果たして善人でいられるのか」と常に考えさせられる。これは、まるで現代版イソップ物語ではないだろうか。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム